#二重生活最大の危機、到来 ページ37
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どうも。市松高校3年、姉崎Aです。
1年の時は一歩踏み入れるのにすら躊躇っていた物騒な雰囲気にもすっかり慣れてしまった今日この頃です。
直樹くんが市松をシメたことで、意図せずうちに市松の次席になりまして。なんかもうここまでくると絡んでくる同級生も楯突いてくる後輩もめっきりいなくなって、本当にここは不良高校かってくらい平和な日常を過ごしています。
「あの、重いです」
「うるせえ」
ベンチの端に座るわたしの肩に頭を預けて爆睡する直樹くん。
頭どころか全体重を乗っけてくるので流石に重くて、つんつん、と茶色い頭をつつくけど、思い切って放った一言は一蹴されました。はぁ、うるせえですか。
(…………ほんと、綺麗な顔)
すうすうと寝息を立てる顔をじっと見つめてみる。
広島での傷が残っているとはいえ、それでも彼の顔は整っている。まぁ、お母さんがあんなに美人だからなぁ。お父さんはどうなんだろう、とはさすがに言えないけど。
しばらく凝視していると、不意にぱちっと目が開いて。逸らし損ねたおかげでまともに目が合ってしまう。慌ててそっぽを向こうとするけれど、すかさず伸びてきた手に頬を掴まれて、それはかなわなかった。
「わっ」
「何だよ、寝込みでも襲う気か？」
「っち、ちがいますよっ！」
持ち前の目力で見つめられればもう赤面不可避で。そんなつもりじゃないと必死で首を振ると、彼はニヤニヤ笑ってから二度寝の姿勢に入った。そしてさっき以上に頭を力を込めて、ぐーっと肩を押してくる。いたいいたいいたい。
「もう、それわざとやってますよね………………ん？」
倒れないようになんとか対抗していると、車の走行音が聞こえてきて。顔を上げると、市松と白百合の間に立派な白い車が止まった。
運転席の扉が開いて降りてきたのは。
「……えっ、？！」
黒いリーゼントヘアに厳ついサングラス、首元に光るチェーンのネックレス。見るからに柄の悪いその人には見覚えがある。難破くんのお兄さんで、かつて関東制覇したとかいう伝説の不良、猛さん。
「ちょっ、ちょちょちょちょちょ」
「……んだよいってえな」
「あれあれあれあれ……！」
「あ？」
びっくりしちゃって、肩に乗った頭をばしばし叩くと、文字通り叩き起された直樹くんが面倒くさそうに眉根を寄せる。そしてわたしが指さす方に目を向けた彼は、猛さんの姿に目をまるくさせた。
「嘘だろ……！」
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
