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「直樹くんこそ平気ですか？わたしよりボロボロじゃないですか」
「俺のことは気にすんな。こんなん慣れっこだよ」
「慣れないでほしいんですけど……」
彼の綺麗な顔は、見るに堪えないくらい傷だらけ。本人は至って平気みたいな顔するけど、心配は消えない。
不良の人たちみんなに思うけど、なんでこんな怪我しまくっても平然としてられるんでしょうか。わたしは一生殴られ続けて生きても慣れないと思う。
「大丸くんは？」
「寝た」
「早」
「色々あって疲れてんだろ。バカなりに頭も使ってたし」
確かに大丸くんはバカだし、彼にしては珍しく一生懸命になって考えてたけども。せめてオブラートに包みましょうね。
……でも裏を返せば、普段は脳筋な大丸くんがあんなに頭を抱えるくらい、水野さんは彼にとって大事な存在だったんだろう。そう思うと今回の事態も無事にまるく収まって、本っ当によかった。
「お前もここ何日かまともに休んでねえだろ、さっさと寝ろ」
「わっ、」
すると、後ろから伸びてきた手にスマホを取り上げられて。困惑した隙に、ひょいっと軽々抱えあげられた。びっくりしてされるがままにしていると、そのままベッドまで運ばれて、ふかふかの布団の上に降ろされる。
「俺は部屋戻って風呂入っから。夜更かしせず寝ろよ、いいな」
「…………ぁい」
言われてみればわたしも、夜更かししてボウリングに行こうとしたあの日以来、バタバタしていてちゃんと寝れていなかった。疲れてるんだと自覚すると一気に眠気が襲ってきて、瞼が重くなる。
とろんと溶けた目を擦って、ぽすぽすと頭を撫でてくれる直樹くんにお礼を言おうと向き直った。
「ありがとうございました。おやすみなさ、……」
彼の目を見ようと顔を上げた、その時。頭に乗っていた手がするりと頬に降りてきたかと思うと、吸い寄せられるように顔が近づく。
おやすみなさい、と言おうとした口が物理的に塞がって、なにか柔らかいものが触れたと気づいた時には、彼は踵を返していた。
「………………え、えっ、？！」
「……じゃな。また明日」
バタン。ドアが閉まる音がして、ひとりきりになった部屋に沈黙が広がる。
直後、一気に集まった熱で顔が真っ赤になって。わたしは思わず枕をぎゅうっと力強く抱きしめた。…え、嘘。今のって……！
(ね、寝れない…！)
それから一晩中悶々とし続けて、結局眠れなかったのは言うまでもない。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
