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難破くんが完膚なきまでに殴り飛ばしたって言うのに、それでも諦めの悪い安藤は、この期に及んでお金で丸め込もうとしてきた。
自分の負けをお金でもみ消そうとする安藤には呆れて仕方なかったけど、難破くんはそれを逆手に取って、『借金は自分が肩代わりする。だから二度と兄妹に近づくな』という条件で、今回の勝ちを安藤に譲った。
そういう訳で今回も一件落着。
難破くんは慌てて学校指定のホテルへ、水野さんは幸男さんと暮らす家へ、わたしたち3人は病院帰りに難破くんの特攻服をコンビニで自宅へ送ってからホテルに帰ってきた。彼いわく、旅行中に鞄の中身を調べられでもしたらマズイから、らしかった。
「中学時代の同級生に再会するとあれですね。ろくなこと起きませんね……」
「全くだ」
病院で治療を受けたとはいえ、全身の怪我が痛む。もっかいお風呂入ったけど控えめに言って地獄だったよね。そう思うと先にシャワー浴びといてよかった。
今は必死で睡魔と戦いながら、直樹くんに髪を乾かしてもらっている。勝手に部屋に上がり込んできたことに関してはもはや慣れっこって感じなのであえて何も言わないでおいた。
「怪我、どうだ？」
「顔はほぼ無傷で済みましたけど……腕が酷いですね」
ドライヤーの風がぴたりと止む。彼の言葉を受けて、部屋着の左袖をめくる。大きな火傷跡の上からつけられた傷はかなり深くて、もしかしたらうっすら跡が残るかもしれない、とのこと。
他にも思いっきり蹴り飛ばされまくった時にできた痣や打撲が全身にあったけど、これはきちんと冷やして安静にしていたら問題ないらしい。
「嫁入り前の女の身体に傷つけるとかとことんクソだなあの男」
「貰い手ないんで大丈夫ですよ」
「俺がいるだろ」
「うっ」
おそろしや。無自覚キラーおそろしや。
そういうのは素面の時に言いましょうね、と額を押すと、「素面だわバカ」と言って後ろからぎゅうと抱きしめられた。
付き合って1年以上経つけども、直樹くんのストレートな言動には未だに慣れない。ていうかクールな彼がこんな愛情表現激しいなんて誰が予想できましたか？ギャップ萌え通り越して燃え死にそうなんですけど？
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
