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「そうか……牧野と吟子が」
特服出せ兄ちゃん出せと騒ぎ立てるふたりをなんとか抑え込んで、そのことを難破くんに話すと、彼は苦虫を噛み潰したように渋い顔をした。
「まぁ心配すんな。まだ牧野さんはお前が市松だと思い込んでんだろ。だったら大丈夫だよ」
「……いや、あれは勘づかれたぜ」
「いつどこで弥生ちゃんが吟子ちゃんに接触するか分かんないし…吟子ちゃんもああ見えて結構鋭いですからね」
「そうなりゃバレるのも時間の問題だな」
難破くんが無事に二重生活を送れるように、全力で協力したいとは思ってる。でも如何せん学校が違うもんだから、白百合で起きるいざこざに関してはどうしようもない。
弥生ちゃんが吟子ちゃんに近づかないように見張るとか、そんなことはとてもできそうになかった。
妹に別人だと嘘をついて同じ学校に通い続けるのは、思っていたよりずっとリスクが高かったみたい。
「この際早めに言っちゃうのもアリだと思いますけどね……」
「右に同じ。これ以上事がデカくなる前に、アイツらにだけでも話しちまえよ」
もちろん誰にもバレないのが理想だけど、時に妥協しなきゃいけないこともある。
訳も分からないままバレるより、自分から話した方が向こうの受け取り方も変わるだろうし。それに、無理に隠そうとして被害が増えることを考えると、ここでふたりに共有すれば、これ以上秘密が広まることはない。
……でも、話すにしてもそう簡単には進まないと思う。
弥生ちゃんはある程度理解してくれるかもしれないけど、吟子ちゃん的には複雑だろうな。ずっと憧れてきたヤンキーのお兄ちゃんが学校では普通の男子高校生だなんて。
まだまだ子供の吟子ちゃんにその事実を受け止められるかどうか、わたしはそれが不安だった。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
