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だんだんと視界がクリアになっていくと、徐々に目の前の“なにか”は鮮明になって。それが難破くんだと気づいた時、痺れを切らした安藤の怒号が響いた。
「オイ、なんか言えや！」
「……うるせえな！！俺はお前らのことブン殴りに来たただの修学旅行生だよ」
金髪に、白い特攻服。白百合での真面目な姿じゃない。こんな時間にこんな格好でホテルを出て、誰かにバレたらどうするの。そもそもなんでわたしたちがここにいるって分かったの。
……なんて、言いたいことは山ほどあるのに声は出なくて。それでも確かな安堵だけが、胸の中に広がっていた。
「大丸！なんで言ってくんねえんだ。俺、大事なツレがそんな面にされてんの黙って見てられるほど人間できてねえんだよ。
…………こっから先は俺の喧嘩だ」
凛々しい瞳に安藤を捉えて。静かに告げた難破くんから溢れ出すオーラに、びりびりと空気が痺れていく。あっという間に空間は彼の色に呑み込まれて、大声で騒ぎ散らしていた取り巻きたちも、水を打ったように静まり返っていた。
「ほう。やってやってもええで。ワシまで辿り着けたらのう」
安藤がまるでゲームのラスボスみたいなセリフを吐くと、取り巻きたちが一斉に難破くんを囲んだ。こういう展開の時は大抵、モブは一掃されて案外さらっとラスボスもやられるんだって相場で決まってるんだから。
だってほら、こき、と肩の骨を鳴らした難破くんは、片っ端から取り巻きたちを沈めていく。
「あの人誰……？すっごい強いね」
幸男さんに手を貸しながら、水野さんがこっちに避難してくる。
わたしたちが手も足も出ずフルボッコにされた相手などまるで意に介さない難破くんの圧倒的な強さに、彼女はぽかんとしていた。
「……アイツは俺の親友だよ」
「親友って…気持ち悪いだろお前」
「悪ぃ難破……楽しみにしてた修学旅行なのによ」
柄にもなくしおらしく涙する大丸くん。それでも彼は相変わらず暑苦しくて。そして、どこまでも真っ直ぐだった。
きっと彼なりに、自分が首を突っ込んだことでわたしたちを巻き込んでしまったと気に病んでいたはずだ。
……だからこそ、なんの迷いもなく助けに来てくれた難破くんの姿が、どんな宝石より輝いて見えたんだろうな。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
