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……完敗だった。
あの後、意識を失った大丸くんを病院に担ぎこみ、傷を負ったわたしと直樹くんも治療を受けたところだ。待合室のソファーで足を組んで座る直樹くんは、深刻な面持ちで床を睨みつけている。
「怪我、大丈夫か」
「平気です。3人の中じゃいちばん軽傷なんで」
「…………そうか」
はあ、とため息を吐いた直樹くんの手が、切れた口元に貼った絆創膏に伸びてくる。触れられると刺すような痛みがぴりっと走って、思わず肩が跳ねた。その反応に、直樹くんは捨てられた子犬みたいに悲しそうな目をして、ぐしゃぐしゃとわたしの頭をかき撫でてくる。
「……守ってやれなくて悪かった」
「謝らないでください。あの場じゃみんなが自分を守るのでいっぱいいっぱいでしたから」
そんな中でも、大丸くんだけが水野さんの為に立ち向かっていた。ちなみに、誰よりも重症だった彼は今も治療中だ。
これからどうしようかと、少し考えてみる。安藤はとても勝てる相手じゃないし、満身創痍の状態では尚更だろう。でもこのまま水野兄妹を放ってはおけないし……。
……と、その時。
「はァ？！」
「！」
聞き覚えのある声がしたかと思うと、「なんでお前ら広島にいんだよ？！」と怒号が飛んできた。ぎょっとして声の方を辿ると、目をまん丸にさせてこちらを指さす難破くんがいて。いやなんでここでばったり会うの。タイミング最悪だ。
「そりゃお前……！観光に決まってんだろうが！」
「観光でなんで病院にいんだよ？！」
「尾道で風邪うつされたんだよ！」
「んなわけねえだろふざけんなお前！だいいち、その顔…」
眉根を寄せた難破くんが、傷だらけの直樹くんを指す。やばいと察したわたしは咄嗟に前に手を出して、彼の顔を隠していた。
「かっ、顔がなんですか？！直樹くんの顔がいいって話なら間に合ってますけど？！」
「必死かよお前ら！！」
「あのぅ！！」
支離滅裂なことを口走ってる自覚ならあった。でも、ただでさえ混乱した頭には上手い嘘が浮かばなくて。わぁわぁと大声で誤魔化していると、受付のお姉さんが叫んだ。
「君たち、静かにね」
「「「…………サァセン」」」
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
