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「バカおめー、空気読め、空気！」
やけに慌てた直樹くんが、声を潜めて後ろのふたりを親指で指す。
そう言われて冷静に考えてみると全てを理解した。わたしは目を見開いて、両手で口を覆う。なんてこと言ってしまったんだ。わたしのバカ。
「ご、ごめんなさい…！！」
難破くんが、神奈川最強の男…つまり弥生ちゃんの元カレ、加納光一を倒したって言ってたし。彼女の言う『特服先生』は難破くんで間違いないだろう。そしてさっき、吟子ちゃんも「兄ちゃん出せ」と言っていた。あれは浮気現場でもなんでもない、ただのエグい修羅場だ。
「姉さんヤキモチ？か〜わいい〜っ！」
「ねえ、もしかして前に言ってたA先輩の彼氏ってイケメン先生？」
もう余計なことを喋らないように全力で口を塞いでいると、ニヤニヤ笑った吟子ちゃんが後ろから飛びついてきて、反対側から弥生ちゃんが覗き込んできた。
…………どうやら修羅場は終わっていなかったらしい。なんでわたし、ちゃんと考えず軽率に飛び込んだんだろう。誰か助けてくれ。
「オイ！あんたが伍代か」
そして、厄介は更に重なり。市松から出てきた1年生が、目をギラギラさせながら近づいてくる。……おおう、修羅場のトリプルブッキング。
「特服とやりてえ。いつもつるんでるアンタを潰せば特服出てくんだろ」
「…………めんどくせえ」
「ほら！コイツ特服と会いたいってよ！兄ちゃん呼んじゃえよ」
「兄ちゃん？！え、今兄ちゃんって……」
「そうだよ！ねえ早く兄ちゃん呼ん」
「ぎ、吟子ちゃんストップ！！」
弥生ちゃんが吟子ちゃんの一言に食いつく。何も知らない吟子ちゃんが全てを暴露しそうになったので、慌ててその口を塞いだ。
「姉崎さん、この際アンタでもいいから……」
「触んじゃねえよ」
「う、っ？！」
バタバタ暴れる吟子ちゃんをどうにか抑えようと必死になっていると、1年生がわたしの肩にぽんと手を置いた。その瞬間、キッと眼光をギラつかせた直樹くんが一発。綺麗に鳩尾に沈んだ右ストレートで1年くんは崩れ落ちた。
……ほっとしたのも束の間、手の力が僅かに緩んだ隙に顔を出した吟子ちゃんが、不機嫌そうに唇を尖らせる。
「なんだよ……！兄ちゃんのカッコイイとこ見たかったのに！」
ここまで来たらもう戻れない。おそるおそる弥生ちゃんを振り返ると、「兄ちゃん……特服……？」と呟きながら、訝しげに眉を顰めていた。
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リュウ - 毎日更新ありがとうございます。毎日チェックしてます！これからも更新お願いします！ (11月28日 2時) (
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
