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「…………闇金だろ。ポリか弁護士に任せた方がいいんじゃねえか」
やっぱりーーーー。
黙って聞いていた直樹くんが口を開く。スロットで擦ったにしては大きすぎる借金、堂々と違法な仕事を紹介してくる……わたしも薄々感づいてはいたけど。嫌な予感は的中してしまった。闇金まで事態に関わってくるなんて、とうとうマズいことになってきた。
直樹くんの言う通り、ここは自分たちだけで何とかしようとせず、ちゃんとした大人たちに頼るのが1番だと思った。……でも、水野さんはふるふると首を横に振る。
「そんなことしたらお兄ちゃんが何されるかわかんない……」
闇金なんて言われても、普通に生活していれば無縁の存在すぎて想像すらつかない。僅かにある知識としては、実家にあったウシジマくんを読んだ程度だ。その僅かな知識を漁っても、ヤバい予感が山ほど溢れかえって。
それこそお兄さんの命が危険に晒されるとか、妹の水野さんにまで魔の手が迫ってもおかしくない。
「それに、捕まったってすぐに出てきちゃうよ」
俯いたままドレスの裾を握りしめて、悔しそうに水野さんは言う。
……はて。規格外の借金を押し付けて違法な商売までしたとなると、罪はそれなりに大きくなると思うけど。
それでもきっぱりと言いきる水野さんに、大丸くんが「なんで？」と震えた声で尋ねる。水野さんは徐に顔を上げて、大きな瞳をうるりと揺らして言った。
「だってそいつ、高校生だから」
その言葉に、雷にでも撃たれたみたいな衝撃が走る。
彼女が言うには、相手の男…安藤は、西日本最強を謳われる男。しかもヤクザの息子という肩書き付きで、何かあると後ろに付いている組員たちが黙っていない。そう簡単に手出しはできないうえ、下手に動いて目をつけられでもしたら、もう逃げ場はない。
「ヤ、ヤクザって……！」
「福岡のガキはエグいな」
闇金、ヤクザ……。かつての初恋相手を助けたいという思いから広げた話は、どんどんきな臭くなっていく。相手は間違いなく、今までに会ったどの不良よりも強い。警察も弁護士も頼れない。手も足も出ないとはこのことだ。
「福岡じゃないよ」
そして、次に水野さんが放った一言が、事態を更なる混沌へと招く。
「……─────私とお兄ちゃんが引っ越したのは、広島だよ」
「そいつは広島一ヤバい男なんだ」と。そう続けた彼女の言葉に、わたしたちは唖然とすることしかできなかった。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
