## ページ11
-
あまりの変わりように、直樹くんとふたり、ぽかんとして顔を見合わせて、ふっと笑う。吹っ切れたどころか、知らなかった難破くんの新しい一面を見れたとご機嫌な彼女は、いつも以上に元気いっぱいだ。
「似合ってるよ、吟子ちゃん」
「ほんと？」
「やったあ〜！」とぴょんぴょん飛び回るその姿は、お世辞とか抜きで可愛くて。本当に可愛い子はどんな格好をしても可愛いんだと思い知った。わたしがいきなり黒髪に戻してツインテールなんかしたら軽く事故だもん。
「姉さんもイメチェンたら？髪型変えたら雰囲気変わるよ？」
「それはそうだけど」
これでも金髪にしてかなり印象変わった人だからね。髪型ひとつでパッと見のイメージがガラッと変わるのは熟知してるよ。
「思い切ってバッサリいっちゃったりしてさ〜、ボブの姉さんも可愛いよ絶対！」
「機会があったらね」
「絶対ないじゃん」
わたしが吟子ちゃんのことをよく知っているように、吟子ちゃんもまたわたしがどんな性格かを理解している。そんな彼女に真顔でツッコまれては、もう言い返しようがない。「だってこれで慣れちゃったから……」と開き直ると、吟子ちゃんは残念そうに頬を膨らませた。
「伍代からも言ってやってよ、ロングとボブの姉さんどっちが好き？」
「どっちも」
「きゃ〜〜〜！！！！」
片手はポケットにin、もう片手でスマホをいじって暇そうだったのに。こういう時だけ返事が異様に早い。あまりの即答ぶりにリアクションに遅れていると、吟子ちゃんが一足先に頬をピンクに染めて、きゃあきゃあとはしゃいでいた。
「ったく、朝からおアツいねえ！末永くお幸せにな！」
「わ」
「じゃ！あたし早く行かなきゃ遅刻するから！」
くるりとその場で身体を半回転させられ、そのまま背中をぐんっと突き飛ばされる。真っ直ぐに直樹くんの方へ倒れていくと、易々と抱き止められて、「ひゅうっ！」とひとつ黄色い歓声をあげた吟子ちゃんは、颯爽と走り去っていった。
「ま、とりあえずは一件落着か」
「平和に片付いて何よりですね」
忙しないその背中が見えなくなると、嵐のあとのような静けさに襲われる。ほんとさ、何事も平和解決がいちばんだよね。
「末永く、だとよ」
「！……もうっ！」
と思ったら、ニヤニヤ笑った直樹くんが肘でつついてくるので。わたしはそんな彼を鞄で軽く叩いて、早足で市松への道を進んだ。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リュウ - 毎日更新ありがとうございます。毎日チェックしてます！これからも更新お願いします！ (11月28日 2時) (
レス) @page8 id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
