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加茂を、棘をこんなにも傷つけられた。
破邪の法でガードしていたとはいえ、それを破られた所為で伏黒の身体にも生傷が絶えない。式神たちも疲れが溜まって、その顔に余裕がなくなってきていた。


(本気で、殺す)


交流会をめちゃくちゃにしたあの呪霊を許さない。
恐怖やら怒りやらが募りに募りまくってぐちゃぐちゃで、もうヤケクソだったのだろう。ここら辺の出来事はあまり覚えていない、と後にAは語っている。


「やりますよ先輩。まだ戦いは終わってない」


起き上がり、仕込み杖に手を伸ばす。
その藍色の瞳にはまるで光が灯っていない。
機械の如く、怒り以外の感情が篭っていない声でAはぽつりと零した。


「交流会直後に葬式とか笑われへんわ、ボケカス」


隣の建物の屋根に突っ込み、よろめきながら瓦礫を退ける花御が視界に映る。今までのAはあれを『恐怖の対象』として見ていた。しかし今は、『殺戮対象』として、その鋭い視線を向ける。Aは九尾に「棘達のことお願い」と一言告げると、伏黒と共に花御の方へと駆け出した。


「──────六根清浄、急急如律令」


胸の前で手を結び、呪文を唱える。口に咥えた人型(ヒトガタ)が、不気味に揺れた。


「神聖なる空の覇者よ、その力我に御貸し給え」


━━━━━━━ゴォオオッ!


『!』


呪文を唱えることによって清められたAが息を吹きかけると、人型(ヒトガタ)はみるみる姿を変えていく。
空を切り裂くようにうねるその大きな影に、伏黒も思わず息を呑んだ。


(あれが蕨美先輩の、『龍』………………!)









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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月26日 12時

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