夜明けのいばら道�� ページ35
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額に青筋を浮かばせ、怒りを堪えきれない野薔薇は、やけに軽くなった袖口から金槌と釘、藁人形を奪われていると理解した。それはAも同じだったようで、もしものために持ち歩いている式神の元となる
戦闘手段を尽く封じられたAたちは、ただひたすらに目の前の悪党を睨めつけることしかできなかった。
｢ていうか、なんで私らの名前………………！｣
｢君たちが自分で教えてくれたんじゃん。ま、覚えてないよね｣
｢教えた…………って、｣
鶴瓶の持つ術式のせいなのかは分からないが、身元は割れている。机の上で足を組んで見下ろしてくる鶴瓶は口元に弧を描き、軽薄な笑みを浮かべてクックッと喉の奥で声を転がした。
｢安心して2人とも。俺らはね、別に危害を加えようってんじゃない。君たちとお話したいだけなんだよね。お話だけならいいって、そっちの蕨美ちゃんも言ってたよね｣
｢そんなん言うた覚えない………………｣
｢黙って聞いてりゃいい加減にしろよ、そんなセリフ誰が言っ────｣
｢ね、信じて？｣
誰が言ったんだよ、と怒鳴ろうと身を乗り出そうとした野薔薇の身体が、すとんと椅子に戻る。
それはAも同じであった。
湧き上がる恐怖や怒りが、その一言ですうっと消えていく感覚に苛まれて、本当に鶴瓶のことを“信じたい”と思ってしまった。何だかおかしいと分かっているのに、何故か彼を信じてしまう、訳の分からない状況に陥ってしまう。
｢ヘラヘラしてんじゃないわよ…………！｣
それでも、心の底から湧き上がった競争心は、縛られていた野薔薇を突き動かした。足を縛られていないのをいいことに勢いよく反動をつけて地面に足をつくと、くるりと身体を半回転させ、椅子の足で鶴瓶に殴りかかった。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
