夜明けのいばら道�� ページ33
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｢え、マジ？スカウト？｣
｢スカウトと考えていただいて構いません。
強引なやり方とは思いますが昨今、モデル界隈は常に人材確保でしのぎを削っておりまして……こうして一際光る資質を持つ、アナタ達のようなダイヤの原石にお時間を頂いております｣
変な奴には着いていくなと言われているうえ、なんか気味の悪い人だと初めこそは警戒していた。
しかしかの有名なHプロダクションからのスカウトとあらば話は別。野薔薇の蔭からそっと姿を表したAは、名刺の名前と目の前の男を交互に見ていた。
｢現在、我々のプロダクションでは『キュート＆パワー』を次代のキーワードとして打ち出しておりまして、アナタはそのイメージにピッタリで。そして隣のアナタも、磨けば光る才能をお持ちであると判断致しました｣
にこにこと褒め言葉を並べる鶴瓶に、Aは目をきらきらさせ、野薔薇は｢なかなか見る目あんじゃない｣と満更でもなさそうだ。
｢よろしければぜひ、少しだけでいいのでお話を聞いていただきたいのです。アナタ達はまさにダイヤの原石と言っていい。いえ、お忙しいのは分かっているのですが、一度お話を聞いて頂くのがお2人の将来の為にも絶対いいと思うんです｣
｢へ……へえー………………そこまで言うなら、話くらい聞いてもいいけど。先輩はどうする？｣
｢………………私も、お話だけやったら｣
嬉々とした表情を隠しきれず、口元の緩みきった2人が頷くと、鶴瓶はそれはそれは嬉しそうに手を合わせて目を細めた。
荷物もありますし道端で話すのもよくありませんね、
と自然に建物の中へと誘導する鶴瓶を疑うこともなくついていく。
わざとらしい程のべた褒めに、美味しすぎる話。こんな展開そう簡単にあるわけないと分かっているのにまんまと信じ込んでしまった自分がいる。何処か夢見心地な頭でふわふわと鶴瓶についていくその足が自分の意思で動いていないことを、2人はまだ知る由もない。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
