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『アナタ達に打ち込んだ芽は呪力が大好物。術を使うほど体の奥深くへ根を伸ばす』
「ご親切に!どうせ殺すつもりだろ」
『説明した方が効くのが早いらしい』
術式を使えば、呪力を吸った芽はさらに深く根付く。
ならば呪力を込めずに陰陽術を使えばいいだけの話。
なのに、
(っ……………………)
花御はAの中で、『殺戮対象』から『恐怖の対象』へとシフトチェンジする。怒りも殺意も『恐怖』という感情に根こそぎ削がれ、足が竦んで震え始めた。そこへ押し寄せた疲労が、Aを地面に縫い付けて離さない。
「チッ!」
それでも諦めない真希は、傷ついたAたちにこれ以上近づけさせまいと遊雲を振るう。それを易々と躱した花御は、止めとでも言わんばかりに木の幹で真希を縛り上げた。
『よく動けますね。だが先程のキレはない』
「伏黒くん、下がり」
「!」
そこで後ろから聞こえた、今にも途切れそうな声。Aは喉からせり上がってくる胃液を吐き捨てると、震える腕で力いっぱい地面を押す。
「先輩ってのは、後輩にでっかい背中見して「着いて来い」言うたるもんや……やのに庇われてどないすんねん……!」
「先輩、」
(身体動かんっ、!けど立てボンクラ…!泣くんは後でええやろ!)
体力を激しく消耗した事で龍の動きも鈍くなり、難なく破られてしまった。今の状態じゃとても敵うはずないのに、伏黒や真希を守るために、Aは起き上がる。けれども身体は言うことを聞いてくれなくて。崩れ落ちたAは、ヒューヒューと浅い息を繰り返しながら、為す術もなく瞳から大粒の涙を零した。
(クソッ!真希さんも蕨美先輩ももう動けない……俺がやんなきゃいけねえのに……!)
そんなAの姿に、伏黒は悔しそうに奥歯を噛み締めた。
……困っている人を皆助けたいと思うAと自分は違う。救う人間を選ぶから、だからこそ、救いたいと思った人は必ず救いたい。自分は善人なんかじゃない。だから、誰より早く倒れるなんてあってはいけない。
キリキリと痛む腹部を押さえつけて、伏黒は力を振り絞る。少しでも花御の意識を自分に向けるため、ありったけの力を込めて、掠れた声で叫んだ。
……が、
「恵、A、やめろ」
真希の言葉に、伏黒の動きが止まる。
眼鏡を払い落とされ、縛り上げられて身動きのとれない真希は、遠くの空に何かを見つけたようだ。
「私たちの仕事は終わった。─────選手交代だ」
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月26日 12時