帰らせて下さい、切実に。【ナンバMG5】 (ページ6)

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道端でばったり出会った迷い犬の飼い主さんを探すべく、柴犬ちゃんと一緒に走り出したわたし。

あれからトコトコ歩いてくる柴犬ちゃんにとりあえずついて行って、そして今わたしはどこで何をしてると思いますか？

「わ、わんちゃん？早くおうち行こうよ、危ない危ない」

河川敷の高い茂みに身を潜めて、わたしはめいっぱいの小声で言った。けれど柴犬ちゃんは全く言うことを聞いてくれなくて、その場に座り込んで動こうとしない。

このまま放っておくわけにもいかないし、どうしていいか分からなくなったわたしは、泣きそうになりながら目の前の“惨劇”に目を向けた。

「てめえら……こっから先は全開でぶっ込んでくんでよろしく！！」

耳を劈くような叫び声に、びくっと肩が跳ねる。声の主は、河川敷の真ん中で大勢の不良に囲まれた金髪に特攻服姿のヤンキー。そんな彼を取り囲む不良たちは、我らが市松高校の先輩方だ。

そして、金髪の後ろで腕を抑えて蹲っているのは、同じく市松で1年生の伍代直樹くん。イケメンだし喧嘩もすごく強いんだって、面食いのアカリさんが興奮しながら遠巻きに紹介してくれたのを思い出す。

「いややばいって、ほんとにやばい、帰りたい」

柴犬ちゃんに先導されるままこの河川敷にやって来たのが5分ちょっと前で、その時にはまだこんなことにはなってなかった。けれど、伍代くんと一緒にいた学ランの男の子が茂みの中に消えていった直後、市松の不良たちが現れたんだ。

不良に囲まれ、初めこそは善戦してたものの、さすがにあの数には敵わなくて。押さえつけられてバットで思いっきりぶん殴られたところに、向こうの茂みから飛び出してきた金髪が参戦って訳。ポケモンバトルか。

ていうか伍代くんあれ腕絶対折れたよね？折れてるよね？わたしなら泣くけど普通に。

「オイ！たったひとりボコんのに道具なんか使いやがって！いちいち群れやがって気持ち悪ぃなあ！！」

大勢相手にひとりじゃ無理だって目を塞ごうとしたけれど、金髪のヤンキーは圧倒的な強さで先輩たちを倒していく。

……わたしは喧嘩なんて嫌い。痛いのも嫌い。未だに血を見て泣きそうになるくらいには嫌なはずなのに、「てめえらどこまで腐ってやがんだよ！」と金髪が暴れ回る様子から、何故か目が離せなかった。

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