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確かにこの傷も、それを負った経緯も酷い。でも所詮は過去の話だ。もう今は何ともない。陰キャ女の身体ひとつ傷ついたところでね〜。なんて言いながら袖を下ろす。
……けれど。ちらりと見やった伍代くんは少しも笑っていない。深刻な顔でわたしを見つめていた。
「無理すんな」
「そんなのしてな……」
「誤魔化せてるつもりかよ」
すっ、と手が伸びてくる。殴られるかもしれない、と咄嗟に目をつぶると、その手はわたしの左頬に触れた。……そこは今朝、ふたりからストレス発散に殴られた箇所。時間も経って何ともなかったのに、ひんやりする手に触れられて、ジンジンと熱を取り戻し始める。
「すぐ自虐するのとか、エグい話も「今は何ともない」って笑って言うのとか……それっていじめられてついた癖だろ」
「それは……」
「どうせバカみてえに笑ってねーと殴られんだろ。心配しなくても俺はそんな趣味ねえよ。嫌なら嫌って言えばいい」
「むしろ顔引き攣らせながら笑われる方が気分悪ぃから」と続けた伍代くんは、もう反対の手も頬に添えた。真っ向から目を合わせられて、その瞳にうつる自分の顔がひどく醜いことに気がついた。……わたし、こんな風に笑ってたんだ。
「次そいつらから電話かかってきても出んな。家まで来られたら鍵かけて俺呼べ」
「う…………」
「返事は？」
「はいっ…！」
泣きそうになるのを堪えて、小さく頷く。そしたら伍代くんは満足したのか、ふっと笑って手を離した。
わたしは知ってる。伍代くんは、クールに見えてすごく優しいんだ。いつもわたしを助けてくれる。欲しい言葉をくれる。今もほら、彼の言葉のおかげで、わたしの心を縛り付けていた何かが緩んだような気がした。
「……よし、スマホ貸せ」
「え？」
「早く」
……しんみりしていたのも束の間、今度はずいっと目の前に手を差し出された。その意図を掴み損ねて戸惑いながら、鞄から出したスマホをその手に置くと、伍代くんは何やら勝手に操作し始めた。のぞき見防止機能つけてるから横から見えないんだよね。
しばらく弄って返されたスマホには、見た感じ変化はない。なんか怖くなって、おそるおそる尋ねてみた。
「何したんですか？」
「アイツらの連絡先消した」
「え゛っ、何やってんですか、殺されますよ……！」
「俺が女相手に負けると思ってんのかお前」
「いや……伍代くんじゃなくわたしが！」
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みお(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました！ (11月3日 2時) (
レス) @page39 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月1日 15時
