## ページ49
-
かくかくしかじか。今日あった出来事を説明すると、「お前マジでさ……」と呆れたようにため息をつかれた。そして、ぽすんっと頭になにかを被せられる。
「帰んぞ」
「え、トウコさんたちは？」
「ほっときゃいいだろ」
被せられたのはいつも伍代くんが被ってるヘルメット。どうやらバイクの後ろに乗せてくれるらしい。でも運転手は伍代くんだし、わたしは慣れてるから君が被りなよ、って言っても無視された。解せぬ。
「お前、断るとかできねーの？」
「……できないです」
「俺らが遊びに誘った時は即答で断ったろ」
「いや、あのふたりとは大して仲良くないんで」
「…………」
「……？」
「…………チッ」
あっ、喜んでる。自分たちは仲良しだって遠回しに言われて喜んでる。
満更でもなさそうに舌打ちをした伍代くんは、わたしが外しかけたヘルメットをむぎゅっと押さえつけて言う。
「にしてもよく耐えてきたよな。いつからだっけ」
「中1の秋です」
「やめたいとか言わなかったのか？」
「言いました、けど…………」
「……けど？」
語尾を濁すと、俯くわたしの顔を覗き込んでくる伍代くん。
わたしは、嫌な気持ちを思い出してぎゅっと下唇を噛み締めた。そして僅かに震える手で、左手の袖をめくる。肘の下から手首にかけてを覆い尽くす
「お前、それ…………」
「パシられはじめて1年くらい経った時、もうこんなことやめたいって言ったんです。そしたらこれです。……230℃で余熱したヘアアイロンで20秒ほどこんがり」
肩を竦めて自虐気味に笑う。わたしの左腕に残っているのは、大きな火傷跡。皮膚科医師曰く、完全に跡が消えることは一生ないらしい。今となっては触っても何ともないけど、当時は空気に晒すだけで刺すように痛かった。真夏でも長袖を着るのはその時の名残りだ。
両親には「ヘアアイロンあっためたまま寝落ちしちゃって腕で踏んづけた」って上手く誤魔化したけど。この傷跡は、彼女らの恐怖とともにわたしの身体にしっかりと染み付いて、今も離れてくれない。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みお(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました！ (11月3日 2時) (
レス) @page39 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月1日 15時
