帰らせて下さい、切実に。【ナンバMG5】 (ページ47)

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「も、もしもし……────アカリさん」

震える指で通話ボタンを押して電話に出ると、その向こうから長らく聞いていなかった声が聞こえた。

『おー、久しぶりぃ。今日もヒマやってんだろ？さすがに休みの日まで伍代といるわけねえよな？』

……そう、電話をかけてきた主は、わたしの宿敵のひとり、アカリさん。ちなみに、ふたりのうち口調が荒いのがアカリさん、ぶりっ子なのがトウコさんだ。…まあどっちも口は悪いけど。

やっと下僕生活から解放されたと思っていたところにこれだ。
画面に表示された名前を見た瞬間、縫い付けられた生存本能みたいなものが働いて、無意識に正座したわたしは、震えながら画面越しの声に対応した。

『用心棒の伍代に構って貰えなくて寂しいと思うからよ、久々にあたしらが遊んでやるよ』

「えっ？！」

『口答えすんの？』

「いえ……！そんな滅相もない……う、れしいです」

「姉崎嬉しいってよ！」「マジぃ？ウケる〜」なんて話し声と下品な笑い声がする。そしてふたりの言う『遊び』は『いじめ』の意だ。わたしはガタガタと震えながら、こんなことなら釣り行けばよかったと深く後悔した。

そして、悲劇というのは重なって起こるもので。

─────ピンポーン

インターホンの音が鳴る。間違いなくわたしの家のだ。

……そして、同じタイミングで同じ音が、電話の向こうからも聞こえた気がした。……嫌な予感がする。全身の毛穴から冷や汗が噴き出す。

直後、ガチャガチャ、と施錠されたドアノブを乱暴に捻る音がして、予感は絶望に変わった。

『迎えに来てやったからよー、早く出てこいよ、サイフちゃん♡』

……終わった。わたしの夏休み最終日。

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