帰らせて下さい、切実に。【ナンバMG5】 (ページ35)

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家までダッシュして持ってきたのは、救急箱とスピーカー。

久しぶりに全力疾走したからか、なんかすごい変な音の咳しながらむせ込んだ。ゲハェッ……っつってた。

(やってやる……！もう後戻りはしないんだから)

高校生になって初めて、まともに『友達』と呼べる存在ができた。それをこんなところで簡単に手放してたまるか。それに伍代くんが死んだら残りの高校生活わたしは誰と過ごしたらいいんですか(本音)

そっと建物の中を覗き込む。近づいてた時から怒号やら殴る音が響いてたけど、実際に目にしたらもっとヤバかった。控えめに言って地獄絵図だ。

「……んじゃ、バカのツラ拝むとするか」

ボロボロになった伍代くんを見下ろしたデカい人が、マスクに手をかける。ヤバい。バレる。

わたしは大きく深呼吸をして、スピーカーに繋いだスマホ画面を操作。“とある動画”を開くと、再生ボタンをタップした。

─────ウウウウウウウウウッッ！！！！

「こっちだ！捕まえろ！！」

「？！」

鳴り響くパトカーのサイレンに、デカ男の動きが一斉に止まる。ついでに外に置いてあったドラム缶ぶん殴ってでかい音出してやると、不良たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

「次はぜってー殺す！！」

ドラム缶ドカドカ鳴らしまくっていると、さすがに喧嘩してる場合じゃないと分かったらしい。物凄い剣幕でそう怒鳴ったデカ男は伍代くんとは反対方向に走り去っていった。

「…………ほっ」

ちなみにサイレンの音は偽物だ。家までスピーカーを取りに戻ったのは、偽物のパトカーや警察官の声を爆音で流すことで、ヤンキーを蹴散らすため。少年漫画でよく見る展開だから、さすがにリアルで引っかかるやつはいないだろうって思ったけど。予想以上に上手くいったみたいだ。

(……いや、こんなことしてる場合じゃないわ)

ここまで派手な騒ぎが起きたんだ。本物の警察が来るのも時間の問題だろう。それに、わたしにはまだやらなきゃならないことがある。

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