帰らせて下さい、切実に。【ナンバMG5】 (ページ4)

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パシられ高校生活何日か目。

体感時間ではもう3年終わって卒業したつもりだけど、カレンダーの日付は入学式のあの日から2日と過ぎていない。時の流れというのはいつも残酷で無慈悲です。

(はぁ……久しぶりに開放された)

トウコさんとアカリさんは隣のクラスのイケイケヤンキー男子たちと合コン(という名の晩御飯会)があるらしく、陰キャは邪魔だから失せろとそれぞれに一喝されてわたしは独りになった。

いつもに増して濃いメイクで来てたのはこれのせいか、なんて思いながらひとりで帰路についたわけですが。びくびく怯えることなく家に帰れるなんていつぶりだろう。わたしはこの上ない幸せを噛み締めながら、家への道を真っ直ぐ歩いていた。

陰キャたるもの寄り道はしない。終業したらどこへも行かず誰よりも早く家に帰る。これが陰に生きる者の鉄則だろうがよ。

「……ん？」

るんるんと弾む足取りで一歩ずつ家へと歩む。そんな道のりに、見慣れない何かを見つけた。

「え？犬？」

向こうの方からトコトコと短い足で歩いてきたのは、まさかの柴犬。その異質な光景に、わたしは目を疑った。だって今どき野良犬とか見ないよ。しかもあんな綺麗な毛並みした野良の柴犬なんて。

わたしは思わず帰路から外れて、可愛らしい顔をして尻尾ふりふりしながら歩く柴犬に駆け寄った。

「どこの子？」

「クゥ〜ン…………」

首元に御守りを提げていることから、どこかの家で飼われてる犬なんだろう。何かあって家から逃げ出したのか、それとも捨てられたか。

耳をぺたんと折って、ぐうぐうとお腹を鳴らすその姿に、わたしは完全に撃ち抜かれてしまった。

おそるおそる手を伸ばして、ふわふわの頭を撫でる。
そしてこの子を絶対に飼い主のところへ帰すんだと、これまでにないほどの強い意志を持ちました。

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