帰らせて下さい、切実に。【ナンバMG5】 (ページ29)

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あの後、吟子ちゃんと時間も忘れておしゃべりして、気づくと朝日が昇ってた。一日最低7時間睡眠が基本のわたしだったけど、一睡もできなかったね、なんて笑いながら欠伸を噛み殺すのもたまにはいいかも。

それからみんなで朝ごはんを食べて、家族の皆さんに見送られて難破くん家を出た。そして、そんな彼に連れられたのは、公園の公衆トイレ。

「わりーわりー」

トイレから出てきた難破くんは、金髪に特攻服じゃなく、白百合高校の学ラン姿に。どうやら家を出る時はヤンキー姿で、毎朝このトイレで着替えているらしい。

「ほら、特攻服学校に持ってくの危険だろ？だから、教科書ここに隠しといて特服と交換するようにしてんだよ」

わお、すごい徹底ぶり。もしうっかり誰かが見つけたらどうするんだろう、とは言わないでおいた。本人がここまでやってるなら水を指すのは野暮だから。

「つか毎朝こんなことしてんのか」

「おう。いやまぁでももう慣れたよ」

肩を竦めて笑う難破くん。目立たない黒髪に学ラン姿の彼が極悪非道のヤンキーだなんて誰が思うだろうか。それに、慣れたって言ったって、高校生になってまだ何日とかなのに。適応能力パネェ。

「なあ、今何時？」

スクールバッグのバックルを閉めて、完全にパンピモードの難破くんにスマホ画面を見せると、「俺急ぐからもう行くわ！」と大慌てで走って行っちゃった。わたしらは授業とかそういう概念ないから何時に登校しようが大丈夫だけど、難破くんはそういう訳にはいかないもんね。

じゃあな！と走ってく背中を見送って、わたしは嵐でも去った後みたいな気持ちになっていた。

「よくやるぜ。いつかガタが出ねえといいけど」

「ですね……」

「俺らも行くか」

「はいっ」

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