帰らせて下さい、切実に。【ナンバMG5】 (ページ27)

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夕飯にデザートのみならず、お風呂と寝巻きまで借りてしまった。

そして、人の家の匂いがする慣れない寝巻きに身を包んでお風呂場を出ると、どこからか飛び出してきた吟子ちゃんに拉致られ、今は彼女の部屋にいる。

「お泊まりといえば恋バナだよね！！」

「え、えっと……？？」

さすがに難破くんの部屋にふたりで押しかけるわけにはいかず、同じ女の子同士ということで、懐いてくれてるし吟子ちゃんの部屋で寝ることになった。のはいいんだけど。

あれよあれよと流されるまま髪を乾かされ、気づけば敷いた布団の上に向かい合うように座らされていた。吟子ちゃんは夜中だっていうのに元気いっぱいだ。

「そういや詳しい自己紹介まだだったね。難波吟子です！中学2年生！趣味はチャリ改造す(デコ)ること！」

「あ……姉崎Aです。高校1年生です。趣味は……ええと…料理？」

「女子力高〜！さすが姉さん！！」

吟子ちゃんを真似て自己紹介をする。別に料理が特別上手いって訳じゃないのに、ここで料理が趣味だと言ったのは、きっとさっき見たテレビの影響だろうなぁ。曖昧に語尾を濁らせながら答えると、吟子ちゃんはきゃあきゃあと頬に手を当てて可愛らしく唸った。

わたしが喧嘩の強くてカッコイイスケバンなんかじゃなく、ただのパシりだって分かっても、吟子ちゃんは変わらず接してくれている。

同級生にすらまともに友達のいないわたしが他学年の人と仲良くするなんて今までなかったから、こうして手放しに慕ってくれる後輩ができたことは素直に嬉しかった。

「じゃ、話を戻すね！」

(戻すんだ……)

らんらんと目を輝かせ、わたしと色違いのモコモコパジャマに身を包んだ吟子ちゃんは、ふんっと鼻を鳴らして右手を腰にやり、左手でわたしを指さしてみせた。

「彼氏いる？」

「残念ながら」

「じゃあ好きな人は？」

「うーん……いないかなぁ」

「ええ……」

年頃の女の子が友達とお泊まり会すると恋バナがしたくなるのは分かる。でも生憎わたしは、その話題について楽しくお話できるような人生を歩んでいない。

ふたつの問いかけを、ふるふると首を横に振って丁寧に否定すると、吟子ちゃんはショックを受けたように肩を落とした。

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