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「で、姉崎の父ちゃん母ちゃんは？」
「は？！」
何回やるんだこのくだり。わたしも同じことやった身でキツくは言えないけど、なんでそんな哀しい身の上をそんな平気そうで語るのよ。聞いてるこっちが耐えられない。
そして難破くん、それは無茶ぶりにも程がある。
「こ、この空気の中でエピソードトークやれと……？！」
「この空気だからこそだろ。行け姉崎」
「いやそれわたしにとって軽い自 殺教唆ですが……」
「あたしも姉さんの両親の話ききた〜い！」
「吟子ちゃんまで……」
言わばこの状況、伍代くんの重たい境遇を明かされて沈みきったこの空気を救える救世主は、ここにはわたししかいないわけだ。難破くんが言いたいのは、今までの全部ひっくり返すくらい楽しいトークで盛り上げろってことでしょ。今すぐビルから飛んで死ねって言われた方が気持ち的には楽です。
それに、高校1年生で一人暮らししてる女の身の上話が楽しいわけないでしょ。
……でも、さぁ早く話せとばかりの周りの視線に耐えきれず、わたしは恐る恐る口を開いた。もうどうにでもなれ精神だった。
「えと……わたしの両親は大阪に住んでます。父親の単身赴任に母親がついて行って、わたしだけ千葉に残ったんです」
「へえ、何で？」
「ほ、ほんとはわたしも高校から大阪の学校通うつもりだったんですけど……その、周りからの『お前も市松行くんだよな』圧に押されまくって……」
「そういやお前、パシりだったな」
「そ、そうなんです……」
いやあ……気まづい。特に吟子ちゃん。あんなに憧れてくれた手前、わたし実はただのパシりで市松入りました☆なんてこと言いづらくて。けれどそんな心配とは裏腹に、皆さんの反応は案外普通だった。……いや、“伍代くんの時に比べて”かな。
「で、でも両親はふたりとも良い人ですよ！毎月写真とお土産いっぱい送ってくるし定期的にLINEくれるし電話もするし」
「大丈夫だ姉崎、お前は頑張った」
「じゃあわたしに振らないでください……！」
そもそもこういうのは陽キャがやることであって、陰キャのわたしにとっては圧倒的苦手分野だ。だけど、お世話になった難破家の空気をぶち壊したままではいられないと、どうにか場を明るくしようと奮闘するも空回り。
ぽん、とわたしの肩に手を置いた難破くんに慰められて、わたしはこの上なく消えたくなった。
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みお(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました！ (11月3日 2時) (
レス) @page39 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月1日 15時
