## ページ18
-
あの時、難破くんが言った頼み。それは、わたしたちに私服を選んで欲しい、とのことだった。
なんでも、今度の日曜日に美術部みんなで集まって公園で写生するんだとか。あの感じで美術部なんだとか言いたいことは山ほどあったけど、「女ウケする服装教えてくれ！」なんて頼み込まれてはもう断れない。だって陰キャだから。
そういう訳で、写生大会を翌日に控えた土曜日。合流場所へ向かうわたしは、バクバクうるさい心臓の音を抑えるのに必死だった。
(へ、へんじゃないよね……？！)
私服を選んで欲しいと言われながらも、実はわたしもファッションにそこまでこだわりはない。なんなら家で過ごすときの基本の服装は中学の頃の体操服だから、確実に頼りにはならないんだよね。
そんなわたしも今日ばっかりはお洒落をして家を出た。高身長故に普段はズボンしか履かないけど、今日は珍しくスカートスタイルだ。制服以外でスカートを履くのは新鮮だから変な感じ。
「おはようございます……」
「おう。はよ」
合流場所へ行くと、既に伍代くんが着いていて、壁にもたれかかってスマホを弄っていた。そんな彼の服装はいつも通りのモノトーン。伍代くんは学校にいる時も私服だから特別感とかはないけど。だからこそ、わたしの私服姿が浮いてるもんで。難破くん早く来て。死んじゃいそう。
よくよく考えたら休日に友達と出かけるなんていつぶりだろう。
いや、あのふたりを友達ってカウントしていいかわかんないけど。
ぎゅっと鞄の持ち手を握りしめてそわそわしていると、そんなわたしをジッと見た伍代くんは、手元のスマホに視線を落として言った。
「………似合ってんじゃねーの」
「えっ？……あ、ありがとうございます！」
「ん」
嬉しくなって、思わず声が弾む。そして、頑張ってよかったな、なんて柄にもなく浮かれていることに気づいて、ブンブンと頭を振った。いや、だから友達じゃないんだってば。
「おう伍代、姉崎」
少し遅れて難破くんもやってきた。声の方を振り向くと、そこには全身赤一色の、オブラートに包んで言ってもかなりダサい服装をした難破くん。あー、なるほど。これはわたしよりヤバいかも。
「……で、今日はそーゆーんじゃない服を選べばいいんだな」
「おう！今度メシご馳走すっからよ！先生方！今日はひとつよろしく！」
「よ、よろぉ……」
「無理すんな」
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みお(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました！ (11月3日 2時) (
レス) @page39 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月1日 15時
