帰らせて下さい、切実に。【ナンバMG5】 (ページ13)

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訳も分からず伍代くんに連れられたのは、学校から少し離れた空き地。そして彼はベンチにわたしを座らせて、「怪我は？」とか「殴られてねえか？」と、甲斐甲斐しく尋ねてくる。それにわたしが「大丈夫です」「平気です」と返していると、伍代くんはほっとしたように息をついた。

「あのっ、本当……助かりました」

「別に。嫌いなんだよ、ああいう奴ら」

お礼の言葉をぶっきらぼうに流してから、わたしの横にどすんと座る伍代くん。最初は怖かったけど、今だって助けてくれたし、意外といい人なのかもしれないな。とりあえず一安心だ、と安心しきったわたしは、スカートの裾を握りしめたまま口を噤む。……あれ、こういう時って何話せばいいんだろう。

陰キャ故に初対面の人とふたりきりの状況に耐えられなくて、噤んだ口元をむにむにさせながら何か話題を探していると、先に話し始めたのは伍代くんだった。

「ダセェよな。ああやって群れねえとでけえ顔できねーんだぜ」

「そ、うですね……」

「自分より弱そうなの見つけて、反抗してこねーの分かってて威張んだよ。弱えから」

「それはわかります……！割と……ぃや、すごく迷惑です、あれ」

はっ、と鼻を鳴らしてバカにしたように話す伍代くん。わたしはその言葉に共感して、コクコクと何度も頷いた。弱い相手の前でしか威張れない……それこそトウコさんアカリさんのように。パシられる側にも人生があるのに、自分たちがいい格好したいがためにそれを平気で踏み躙る……。

ほんと不良ってタチが悪いにも程があります、と続けると、伍代くんは驚いたように目をぱちくりさせた。

「なんだ、お前ヤンキーじゃねえのか」

「そんなっ…………わたしはただの根暗です」

「じゃあなんで市松(ここ)いんだよ」

「圧力に抗えなくて。その……ダサい人たちの」

伍代くんの言葉を借りて言うと、彼は「へぇ」と面白そうに笑う。わたし渾身のボケだった。よかった、これで無反応だったらソッコー舌噛み切って死んでたからね。ヤンキー相手にスカしたなんて考えるだけで鳥肌もんだわ。

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