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掴まれた方とは反対の、右手を振り切ったところで、自分が何をやらかしたのかに気づいた。
ヒリヒリ痛む手のひら、右を向いたまま固まる先輩。
恐怖のあまり自己防衛本能が働いて、咄嗟に目の前の先輩の頬をビンタしていた。それもかなりの強さで。
「…………このアマ…」
「ぁ、っ！」
なんてことをしたんだと気づいた時にはもう遅い。殴られた先輩の黒目が、ギロリとこちらを向く。さっきまで友好的に笑っていた他の先輩たちも、威嚇するようにわたしを睨め付けた。
ごめんなさい、の言葉すら出なくて。目尻に涙が溜まる。
ああ、どうしよう。こんなことなら素直について行ってされるがままにしてれば。目を瞑っていつもみたいに耐えてれば、無事に家に帰れてたかもしれない。少なくとも、こんな怖い人たちに目をつけられなくて済んだのに。
「ご、ごめ、なさ……ッ！」
「俺を誰だと思ってビンタとかしてくれちゃってんだてめえ！」
「！」
わたしの腕をすごい力で握りしめた先輩が、目くじらを立てて怒鳴る。その大声に身体は完全に萎縮してしまって。じりじりと後退ると、トン、と背中に冷たいコンクリートが触れる感覚。ちらりと見ると後ろは壁で、もう逃げ場はないとわかる。……いや、逃げ道があっても逃げ切れる状況じゃとてもないけど。
「久々にヤル気んなったわ。覚悟しとけ女、ツラがいいからって調子乗りやがってよ……」
腕を掴む手が離れたと思うと、今度は胸ぐらを掴んで引き寄せられる。ぷつん、とボタンを留める糸がちぎれる音がした。身体からどんどん温度が消えていく。浮かんだ涙がとうとう零れて、ぼやける視界に、拳を振り上げる男の姿が見えた。
……助けて。
誰か、助けて。
「ぶち犯……」
「オイ」
ぴたり。男の動きが止まる。響いたのは、ここにいる誰のものでもない声。「あぁ？」と先輩たちが振り返る先には。
「女相手に何人がかりだよ。趣味悪ぃな」
「…伍代ィ！！」
先輩が声を裏返らせて叫ぶ。そしてターゲットがわたしから完全に伍代くんにシフトチェンジ。身体を拘束する手がなくなって、とうとう力尽きたわたしはその場にぺたんと座り込んだ。
ひたすらにぼろぼろ涙を零すわたしの前で、伍代くんは次から次へと飛びかかってくる先輩たちをひとりずつ確実にやっつけて、真っ直ぐこっちへ来たかと思うと、わたしの前にしゃがんだ。
「行くぞ」
「……え？」
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みお(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました！ (11月3日 2時) (
レス) @page39 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月1日 15時
