## ページ9
-
それでも伍代くんは、身体を引き摺りながら起き上がって、そんな彼を見下ろす真宮を殴り飛ばす。
「情けねえぞ…………悲しいこと言ってんじゃねえよ！」
突然の大声に、びくっと身体が跳ねる。クールで寡黙な伍代くんがここまで余裕なさげに声を荒らげるのを見るのは初めてで、思わず涙も引っ込んだ。
「結局、お前を笑ったヤツらに負けてんじゃねえか！……トルエンパクってヤクザ紹介してもらうだ？ふざけんじゃねえ！俺は！お前をそんな目で見たこと一度たりともねえんだよ！！」
唖然とする真宮を殴りつける姿に、気づいた。伍代くんは真宮を恨んでなんかいないと。今でも友達として、彼を救おうとしている。
「俺はお前のツレだ！ヤクザになんかさせるかよ！！」
倒れ込んだ真宮に馬乗りになって、今度は伍代くんがその胸ぐらを掴んで叫ぶ。直後にシンと静まり返った空間には、真宮の浅い息の音が響いて。震えるその吐息に、彼の心までもが揺れているとわかる。
…………その時。
─────プップー！！
鳴り響くクラクション。いきなり辺りが明るくなって、ヘッドライトを光らせながら一台の車が乗り込んできた。
「オイオイ真宮ぁ、何なんだソイツ」
「てめえは勝手ばっかしやがってよぉ」
車から降りてきたのは、不良なんてレベルじゃないくらいガラの悪い男ふたり組。そしてわたしは今までの話の流れで察してしまった。あれはヤクザだ。とうとうヤバい。
「コイツらまともじゃねえんだ。早く逃げろ」
よろよろと起き上がった真宮がそう言ったけど、伍代くんはそんな彼を押しのけてヤクザのひとりを蹴り飛ばした。わーお。
「何度も言わせんな。こーゆー奴らとはきっぱり縁切るんだよ」
そうは言っても、伍代くんも真宮も既に満身創痍。この状態で喧嘩なんてしたらどうなるか、結果は目に見えてる。
現にほら、今の蹴りなんて意にも介してないヤクザはめちゃくちゃゲラゲラ笑ってるもん。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるちよ - とても面白くて毎日読み返しています！リクエスト良いですか？！今の五代くんの話が終わったら寂しくなってしまうので、もしまめこさん さえよえれば、五代くんの話を他にも書いて欲しいです。 (11月10日 18時) (
レス) id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月3日 12時
