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たったひとりで敵を制圧した難破くん。しかし彼は「じゃ」と片手を挙げて走り去ってしまった。いつもなら「大丈夫かお前ら？！」とか言ってきそうなのに。
……それはそうと。
殴られ蹴られた箇所がズキズキ痛む。どこか切れたのか、口の中が鉄の味する。ぺっとその場に血を吐き出した時、ガランと何かが崩れる音がした。
「………姉崎」
「伍代く……！」
満身創痍の身体を庇いながら、瓦礫に手をついて立ち上がった伍代くんは、覚束無い足取りで近づいてくる。わたしも起きようとするけど、それよりも先に、ふわっと身体が浮く感覚がして、視界が真っ暗になる。抱き締められていると気づくのに時間はかからなかった。
「悪かった……痛かったし怖かったよな」
「ぁ、……う………」
「もう離れろなんて二度と言わねえ。今度はぜってー守るから」
耳元で鳴る伍代くんの声は震えていて、どれだけの心配をかけていたんだと思うと胸が詰まった。それと同時に、今までの恐怖やら痛みやらが舞い戻ってきて、堰を切ったように涙が溢れ出した。ぐす、と鼻をすすると、抱き締める力はいっそう強くなる。
「来てくれなかったら……死んじゃったらどうしようって思って、こわくてっ」
「………うん」
「だけど……わたしがヘマしたせいで伍代くんが怪我するのはもっと嫌で……でも、でもっ！」
「…………うん、ッ」
逞しい胸元に顔を埋める。とくん、とくん、と心臓の音がして、ああ、ちゃんと生きてるんだと実感できた。その安心感に、また涙は溢れて。
「助けてくれてありがとう……！」
それは、心の底からの本音だった。わたしが捕まったせいで伍代くんが喧嘩に巻き込まれて、目の前で傷つくのを見たくなかった。それならどんなに痛い目を見てもいい。いつものように、自分ひとりで耐えて耐えて耐え続けるって気持ちでいた。
だけど、心のどこかで伍代くんに縋る自分もいた。彼ならきっと助けてくれると、信じてしまっていた。
(……終わったんだ)
伍代くんが来てくれて。難破くんが来てくれて。
全部終わった。助かった。
ホッとした瞬間力が抜けて、抱き締めてくる伍代くんの腕に身体を預けた。
…………身体を預けた？
「あ……あと車の修理代っていくらぐらいするんでしょうか」
「お前な」
冷静になると、置かれている状況に改めて気づく。
真っ赤になるのをギリギリ押さえ込んで、何ともない風に取り繕った。
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はるちよ - とても面白くて毎日読み返しています！リクエスト良いですか？！今の五代くんの話が終わったら寂しくなってしまうので、もしまめこさん さえよえれば、五代くんの話を他にも書いて欲しいです。 (11月10日 18時) (
レス) id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月3日 12時
