## ページ15
･
「強さと美しさ…その双方を兼ね備えるヒーローはそう多くいない。しかも君はどちらの要素も既に一流レベルと来た。実にエレガントだった。痺れたよ」
正直好きじゃない、なんて言われればダメ出しばかりかと思ってしまうもの。しかし流石はプロだ。きちんと相手を観察し、賞賛すべき場所も見つけて素直に褒めてくれる。
“強さと美しさ”を追い求めてきたAにとって、その要素がプロに通用し、“一流だ”とまで言って貰えたことは素直に嬉しかった。その言葉に、ぽっ、と血色の悪い頬が僅かに桜色に染まる。
しかしベストジーニストは、そんなAをも“好きじゃない”と称した理由となる要素を見出していた。
「だが君には……いや、君たちには共通した致命的な欠点がある。自分が1番強いと思いこみ、なりふり構わずそれを実践しようとする凶暴な人間性」
人と比べて自信がある方だという自覚はあった。誰よりも優れていたいという自我も。
しかしそれを“凶暴”だなんて言葉で形容されてしまうとは。鮮やかに染まっていた頬は一瞬にして色をなくし、ギリギリと眉根にシワが寄る。
「君のそのエレガントの奥に眠るのは、まるで真逆の獣のような本性。そして君たちふたりの共通した最悪の要素がぶつかることで、エレガントとは程遠い姿を成す」
「っ……！」
ただでさえ屈辱的なその言葉が、褒められた直後だからこそ余計に刺さる。耐えきれなくなったAと勝己は、ぐっと握った拳に力を込めた。
「わざわざ指名してお説教か……」
「こんな輩と一緒にしないで……」
プロの目にふたりがそう映っていたのは事実かもしれないが、だからといって言われっぱなしというのも納得がいかない。
ふたり揃って口を開くが、次の瞬間、身体ががちりと硬直する。
指の1本すら上手く動かせなくて、視線を下にやると、幾本もの糸がふたりの身体に絡みつき、動きを拘束していた。
「そんな者たちを矯正するのもまた、私のヒーロー活動。敵もヒーローも表裏一体」
「い、っ……！」
こうしてふたりして縛り上げられるのは個性把握テスト以来だが、あの時の捕縛布とはまるで訳が違う。下手に動けば手足を捻じ切られそうな痛みに、ぐっと目を細めた。
「……そのギラついた目に見せてやるよ。何が人をヒーローたらしめるのか」
蒼い瞳が、光を集めてあやしく煌めいた。
1週間の職場体験は、まだ始まったばかりである。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レナ(プロフ) - 面白いので更新してください！ (3月13日 3時) (
レス) @page17 id: f9e6be770b (このIDを非表示/違反報告)
もり - 青柳ちゃんかっこかわいいー！！めっちゃ面白いです！更新頑張ってください！ (1月5日 9時) (レス) @page8 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - いろんなヒロアカ小説読みましたが、こちらのヒロインちゃんが1番好き！！強くてかっこいい女子好きです！これからどうやって恋愛展開になっていくのか楽しみです！！更新頑張ってください！ (10月12日 17時) (レス) @page3 id: 6970de97bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年9月30日 23時
