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『グルルルルッ………………』
｢｢？｣｣
先程までAの足にしがみついて甘えていた梅が、いきなり牙をむいて唸り始めた。木々の立ち並ぶ森の奥を睨みつけて、今にも飛びかかりそうな勢いで爪を地面に突き立てている。
｢梅、急にどうしたん…………──────！｣
そしてその直後、Aと棘も何かに気づいて足を止めた。凄まじい気配が、向こうの方から漂ってきている。ぴりぴりと肌を突き刺すような、ただものではないオーラがふわりと空気を飲み込んでいく。
(この気配は明らかに2級以上………何で？！)
この森に放たれるのは3級以下の弱いものと、ラスボスの2級呪霊のみ。それなのに、その気配は準1級術師である2人をその場に釘付けにして動けなくした。
｢こんぶ…………｣
すかさずAを背に庇い、棘が口元のファスナーに手をかける。その間にも気配はどんどん濃くなり、何かが土の上を蠢く音が聞こえてきた。Aは涙が溢れそうになるのを堪え、仕込み杖の柄を握る。
━━━━━━━ズンッ、
｢｢！｣｣
木の向こうからゆっくりと姿を現した呪霊。
ぐりぐりと辺りを見回す剥き出しの目に削がれた鼻、並んだ歯の奥から長い舌が垂れ下がっている。
それは楽巌寺によってエリア内に放たれた準1級呪霊。
その目的はもちろん『虎杖悠仁を殺すこと』。そんな事情など知らないAたちは、ただただ目を疑う状況に混乱していた。
『ガルルルルッ………………』
｢ッあかん梅、止まって！｣
唸り声を上げながらとうとう梅が駆け出していく。
Aの制止の声も虚しく、その爪を振り上げる
……………………が、
『が、ッ……………………』
直後、呪霊の首がその場に転がり、梅の身体がバチンと弾けた。
｢……………………梅？｣
力なく横たわる梅は式神の元である
『▒▒▒▒▒▒▒。』
訳の分からない音を発す呪霊は二足歩行で、普通目が存在しているであろう場所から枝が生えている。それは明らかに今までの呪霊より強い。準1級呪霊と、身体の硬い梅を一撃で消し飛ばしたというのだから。
｢ひ、…………っ！｣
｢しゃけいくら、明太子｣
ジイイ、とファスナーの下りる音。
瞳を恐怖の色に染めるAを庇った棘は、不機嫌そうに舌打ちをした。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月12日 12時
