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(い、イタドリユウジ)
瞬間、Aの時間は止まった。
その理由は、彼こそが以前起きた特級呪霊絡みの任務で命を落とした1年、その張本人だからだ。
(何で?死んだはずちゃうん?)
Aは叫びたい気持ちを抑え、必死で考えた。
死んだはずの人がいきなり現れるなんて可笑しい。
となると目の前で変なポーズをとっているのは悪霊か生霊。そしてAは陰陽師。ここから導き出される答えはただ一つ。
Aは震える手でポケットから御札を取り出した。
「ああああ悪霊退散ッッ!!!」
「ええ?!あ、ちょ、ストップ!」
「コラAちゃん!祓っちゃ駄目!」
良い霊か悪い霊かは分からない。けれどどんな霊でも最後は成仏しないといけないので、現れたら怖がる前に問答無用で祓えと教わっている。しかし、凄まじい気がAから発されると、大慌てで五条が御札を取り上げた。
「この子生きてるから!死んでないから!」
「え?」
その言葉に、もう一度虎杖を見やる。
よく見ると影はちゃんとあるし、悪霊の気配もない。
正真正銘生きた人間だ。祓わなくてよかったあ、と一安心したが、Aはその顔に見覚えがあった。そしてそれは向こうも同じだったようで。
「あれ、きなこ先輩じゃね?」
「君、あの時の1年生?」
数日前に出会った正体不明の1年生の事を思い出した。
『きなこ先輩』とあだ名をつけられ、最後はきなこ増量中のわらび餅を1パックプレゼントした時の事。
安心しきった笑顔で「久しぶりやねえ」と言うAに、「こちらこそ久しぶりっす!」と虎杖も笑う。
だが、いきなり箱がガタンと揺れた。
「デレデレしてんじゃねえよクソ野郎」
「?」
声がした方を見れば、涙目になりながら箱を蹴飛ばす野薔薇が。態度こそ悪いが、虎杖が死んだ事を悲しんでいたのだ。そんな虎杖が生きていたことが嬉しいような、今までの心配を返して欲しいというような、複雑な気持ちに駆られていた。
「なんか言うことあんだろ」
「…………生きてること、黙っててすいませんでした」
ふんとそっぽを向く野薔薇。そんな横でこちらを見ている伏黒も顔には出ていないが心配していたようだ。
予想外れすぎるサプライズを経て、虎杖悠仁は晴れて復活したのであった。
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月12日 12時