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「ただいま帰りましたー」
「高菜ッ!」
「あれえ。棘」
それから部屋に着くまでにわらび餅は完食し、空になった容器の入ったビニール袋をぶんぶん振り回しながら自室に入る。すると我が物顔でベッドに座っていた棘が「遅い!」とでも言いたげに自分の隣をばしばし叩いた。
「すじこ」
「パンダにわらび餅食べられたから買いに行ってただけやよ、大丈夫」
「ツナツナ!おかか!」
「うう…………はいはい」
棘が入浴中にコンビニに走ったものだから、棘からしたら風呂から上がるとAがいなくて心配したのだろう。夜道は1人じゃ駄目!と何度も釘を刺すと、隣にちょこんと座ったAの膝に頭を乗せた。
「……………………こんぶ」
「撫でろと」
「しゃけ」
そして言われるがまま、風呂上がりの髪に指を通して撫でると、棘はまるで子猫みたいに目を細めた。
「高菜〜…………」
「ふふ、髪の毛伸びたねえ」
「しゃけ」
「ん、私?」
さらさらやねえ、と髪を梳いていると、棘の手が頭に伸びてくる。その手がAの髪を結っていた髪留めを解くと、胸元まで伸ばされた長い髪がさらりと流れた。棘は徐に身体を起こすと、その透き通った首筋に顔を埋めた。
「ちょ、ふふ、こしょばい………………」
「しゃけ」
熱を孕んだ声が耳元で鳴って、ほんの少しだけ、Aの肩がぴくりと揺れたのを棘は見逃さなかった。
小さな彼女の身体をそっと包み込むと、そのままベッドに横たえる。
「ん、っ………………」
首筋から頬にかけてを唇でなぞれば、華奢な喉から甘い声が漏れた。
「高菜、」
言うなれば、何も言わず何処かへ行ったお仕置だ。
何かを言おうとした紅い唇に、噛み付くように自分のを重ねる。角度を変えて何度も重ねて、名残惜しく離れると、紅潮しきったAの頬があった。
「棘のいじわる」
ふいっとそっぽを向くいじらしい態度ですら愛しく思えて、もう1回、もう1回とその甘美で真っ赤な果実を堪能するのであった。
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月12日 12時