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｢あら、落ちこぼれ陰陽師家の箱入りお嬢様は人に物を投げていいなんて教わったのかしら｣
｢………………｣
｢何、やる気？｣
凄まじい威力で壁に叩きつけられ、無惨にも缶から地面に流れ出していく赤茶色。既のところでそれを避けた真依はへらへらと笑いながらAを見下していたが、こちらを見上げるAの鋭い視線に、すっと目を細めた。
｢ふん、別にいいわよ。痛くてビービー泣いても知らないから…｣
｢ふんっ！｣
｢？！｣
今度は銃口をAと真希に向ける真依の背後、いつの間にやら起き上がっていた野薔薇が彼女に飛びついた。
｢A先輩ナイス！……おろしたてのジャージにばかすか穴開けやがって。てめえのその制服置いてけよ、私の夏服にしてやる！｣
｢次は体の穴増やしてやるわよ。あとその足の長さじゃこれは着れないんじゃない？…………う、っ！｣
ギチギチと嫌な音を立てながら真依を締め上げ、とうとう意識を落とす……寸前、
｢帰るぞ、真依｣
頭の後ろを掻きながら現れたのは東堂だ。
彼が無傷で戻ってきたということは、伏黒は……
と顔を青ざめさせた野薔薇だったが、Aが優しく微笑みながら言った。
｢棘とパンダが行ってくれてるから大丈夫｣
｢楽しんでるようだな｣
｢ごほっ、……冗談！私はこれからなんですけど｣
｢ったく。お前と違って俺には東京で大事な用があんだよ｣
銃を構え直す真依に呆れたような東堂は、ため息混じりにポケットから何かを取りだした。
｢高田ちゃんの個握がな！｣
｢………………｣
高身長アイドル高田ちゃん。どうやら彼はその握手会に行くらしい。そんな事情、心底興味のない女子4人は、冷たい視線を東堂に投げた。
｢あんた達、交流会はこんなもんじゃ済まないわよ｣
真依はそう言い残して、勝手な理由で颯爽と去っていく東堂のあとを追いかけた。
｢何、勝った感出してんだ！制服置いてけコラァ！｣
｢あかん野薔薇ちゃん、落ち着いて｣
｢ここじゃ勝っても負けても貧乏くじだ。交流会でボコボコにすんぞ｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月12日 12時
