■■■ ページ45
・
A達が訳もわからずただ花御を睨めつけていても、彼女(彼?)は気にも留めず話を続ける。
『森も空も海も、もう我慢できぬと泣いています。
これ以上人間との共存は不可能です。星に優しい人間がいることは彼らも知っています。しかしその慈愛がどれほどの足しになろうか』
全身から放たれる凄まじいプレッシャーと、頭の中に流れ込んでくる不気味な声。Aは凍りついて、瞬きすら忘れていた。
「な、んで喋、てんの……………………」
「独自の言語体制を確立してるんです」
「………………狗巻を下がらせろ」
『彼らはただ“時間”を欲している。“時間”さえあれば星はまた青く輝く』
「蕨美先輩、また攻撃が来るかもしれない。だからその時のために破邪の法でバリアを……───先輩?」
伏黒がハッとして振り返る。
そこには、立ち竦んだまま動かないAが居た。
「っ、………………ぁ………………」
印を結んで破邪の法を張りたい。それなのに手が震えて動いてくれない。声を出して泣き喚きたいのに、恐ろしい呪霊から視線を背けたいのに。声も思うように出せず、それでも見開かれた瞳からは、ぼろぼろと大粒の涙が零れた。
『人間のいない“時間”。
━━━━━━━━死して賢者となりなさい』
押し寄せる『死の感覚』。
涙に濡れた藍色の瞳がふるりと揺れた。
「嗚呼、私はこれから死ぬんだ」という思いが募って、その度に恐怖で視界が霞んでいく。
「ら、び、……………………蕨美先輩!」
「!」
━━━━━ドォォオオオオンッッッ!!
伏黒の叫び声と爆音で我に返った。否、怒鳴り声といった方が正しいだろうか。
「何ボーッとしてんだ、死にたいのかよ!」
「ご、ごめなさいっ………………」
襲い来る巨大な木の幹を避けながら「こっちこっち」と手招きする棘に追いつけば、思わず敬語も忘れて伏黒が怒鳴る。
「ツナ」
「………………あ、すんません。つい」
「ええねん、うん。ちゃんと周り見てへんかった私が悪いんやし」
・
798人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月12日 12時