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A達が訳もわからずただ花御を睨めつけていても、彼女(彼?)は気にも留めず話を続ける。


『森も空も海も、もう我慢できぬと泣いています。
これ以上人間との共存は不可能です。星に優しい人間がいることは彼らも知っています。しかしその慈愛がどれほどの足しになろうか』


全身から放たれる凄まじいプレッシャーと、頭の中に流れ込んでくる不気味な声。Aは凍りついて、瞬きすら忘れていた。


「な、んで喋、てんの……………………」

「独自の言語体制を確立してるんです」

「………………狗巻を下がらせろ」


『彼らはただ“時間”を欲している。“時間”さえあれば星はまた青く輝く』


「蕨美先輩、また攻撃が来るかもしれない。だからその時のために破邪の法でバリアを……───先輩?」


伏黒がハッとして振り返る。
そこには、立ち竦んだまま動かないAが居た。


「っ、………………ぁ………………」


印を結んで破邪の法を張りたい。それなのに手が震えて動いてくれない。声を出して泣き喚きたいのに、恐ろしい呪霊から視線を背けたいのに。声も思うように出せず、それでも見開かれた瞳からは、ぼろぼろと大粒の涙が零れた。


『人間のいない“時間”。
━━━━━━━━死して賢者となりなさい』


押し寄せる『死の感覚』。
涙に濡れた藍色の瞳がふるりと揺れた。
「嗚呼、私はこれから死ぬんだ」という思いが募って、その度に恐怖で視界が霞んでいく。


「ら、び、……………………蕨美先輩!」

「!」


━━━━━ドォォオオオオンッッッ!!


伏黒の叫び声と爆音で我に返った。否、怒鳴り声といった方が正しいだろうか。


「何ボーッとしてんだ、死にたいのかよ!」

「ご、ごめなさいっ………………」


襲い来る巨大な木の幹を避けながら「こっちこっち」と手招きする棘に追いつけば、思わず敬語も忘れて伏黒が怒鳴る。


「ツナ」

「………………あ、すんません。つい」

「ええねん、うん。ちゃんと周り見てへんかった私が悪いんやし」









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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月12日 12時

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