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━━━━━━それから1年後



「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!」


東京都立呪術高専2年寮。
その建物……いや、高専の敷地全体に泣き声が響き渡った。その声の正体はもちろんこの人。


「ビービー泣くのもいい加減にしろよマジで」

「う、っ、だって真希怒るんやもん」

「怒られてる理由を考えろよお前だろ!」

「うわぁぁぁあああんっ!」


目尻を釣り上げて怒鳴る真希の前でぎゃんぎゃん泣き喚くA。その傍らには、「またか」というようにため息をつく狗巻棘と、「まあまあそう怒るなよ……」と眉を下げるパンダがいた。


「私謝ってんのに…………」

「誰もお前が悪いなんて思ってねえよ、私はそうやってギャーギャー泣き喚いてることに対して怒ってんだよ!」

「じゃあそう言ってぇや!」


事の発端は、遡ること10分ほど前。
Aが誤ってお皿を割ってしまったことから始まる。皿を割ってしまったとAは素直に謝ったが、どうやら怒られると思ったらしい。我慢できずに泣いてしまったというわけだ。そして冒頭の台詞に。


「ごめんねって言うたのに…………」

「しゃけしゃけ、ツナマヨ」

「もう分かったから泣き止めよ」

「真希もほら、怒るなって。赤ん坊が泣くからって手上げる母親がいたらそれは虐待だぜ」

「こいつァもうガキじゃねえだろ。そしてなんで私をこいつの母親みたいに言ってんだ」


棘とパンダがそれぞれAと真希を宥める。
棘はAの肩を抱き寄せ、それはそれは優しくその頭を撫でた。それを見た真希が「悪いの私かよ!」と怒鳴っているがフル無視だ。


「高菜?」

「……………わらび餅食べたい」

「しゃけ」

「棘、お前はAを甘やかしすぎだ」


それが俺の特権だとでも言いたげに棘が「おかか!」と叫ぶと、「はいはいわかったよ」と真希は肩を落とした。Aと真希の喧嘩(?)はいつもこうして真希が折れて終わる。案外泣き止むのが早いAは、目に溜まった涙を拭いながら「ごめんね」と何度も謝った。


「ツナマヨ」

「………いいよ」

「なーに、どっか行くの?」

「しゃけしゃけ」


Aの手を引いて立ち上がった棘は、「ちゃんと頭冷やしてこいよ」という真希の声に片手間に返事をして、外へと歩き出した。


「真希はさ、Aが嫌いか?」

「ンなわけねえだろーが」


真希とパンダがそんな会話をしているとは知らずに。








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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月12日 12時

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