episode #90 ページ44
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喉から血を噴き出して息絶えた母の姿が、悍ましい笑顔でAの手を引く兄の顔が、未だに夢に出てくることがある。その度に己の行動を後悔しては飛び起きて、意味もなく無陀野に縋って泣いた。情緒も理性も、とっくに崩れ去っていたのだ。
｢家族を殺した奴の仇を討ちたいとか、復讐したいとか。そんな下らないこと思ったことはない。だって……｣
椅子の上で体育座りをし、立てた膝に顔を埋めるAの表情は測りかねない。でも、その声はひどく震えていた。
……声だけではない。手も足も、全身が小刻みに震えている。自分自身を慰めるようにぎゅっと肩を抱いて、泣いているかのような声で呟いた。
｢…だって、あいつらが死んだって何も変わらないから。お母さんが復讐を望んでるかなんて分からないし。それに…｣
｢！｣
まるで小さな子供のように丸くなって泣くAの姿を、迅は見た。……いや、見てしまった。
｢─────どれだけ残虐な方法で兄さん達を殺して痛い目に遭わせても、お母さんはもう帰ってこない｣
何もかもを捨て去ったような顔をして、どんなことが起きても表情を変えなかったAが泣いた。
どこまでも綺麗なワインレッドの瞳から、宝石のような涙が零れ落ちる。くすみひとつない透き通った肌に涙が筋を描く様は何よりも美しくて、迅は思わず息を呑んだ。それと同時に、ゾクリと背中がざわつくのを感じる。
(ああ、これが……)
普段は感情を制して偽っているからこそ、こういう時の涙には一切の曇りを許さない。切なる思いが迅の心に重くのしかかり、言葉を失った迅は目の前の天使をただ見詰めた。
言うなれば彼女は、幾本もの茨の中に隠された一輪の薔薇の花。棘だらけで誰も触れられない、誰よりも美しい紅。……ああ、これが。
これが、黒葛原Aの本性。
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レン(プロフ) - 桃源暗記の夢小説少ないんでめちゃくちゃ嬉しいです！しかもお話も面白くてもう神かなんかですか?!これからも無理せず更新頑張ってください!応援してます！ (2022年1月4日 22時) (
レス) id: 9afc0ca98b (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 思わず一気読みしてしまいました！とっても面白いです、更新も無理ない程度に頑張って下さい！ (2022年1月3日 0時) (レス) id: 16a4fd6cb5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 久々に更新嬉しい！ (2021年11月17日 18時) (レス) id: bb356cf189 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - ヒロアカでまめこさんに出会いまして、桃源暗鬼も書いてる！ってなって来ました！これからも引き続き更新頑張って下さい！ (2021年9月12日 11時) (レス) id: 1c4434e42e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - もうほんと最高です (2021年8月20日 22時) (レス) id: 75eebcd608 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月31日 19時
