episode #71 ページ23
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────────蓬と対戦中のAたちが謎の地震に襲われる少し前。
清水寺から離れた裏山に、無陀野は居た。
「あの…先生、ここは……?」
そしてその横には、セーラー服に身を包んだ帆稀が。
羅刹学園で留守番をしているはずだったのだが、仲間のピンチに黙っている事も出来ずに京都まで来たのだという。そんな彼女が不安そうに眉を下げて辺りを見渡すと、無陀野は胸ポケットに入れたスマートフォンに向かって口を開いた。
「遊摺部、通話状態のままにしといてくれ」
『分かりました……けど一体何を?』
患者の避難を終えた遊摺部の声が電話の向こうから聞こえてくる。その問いかけに無陀野は顔色ひとつ変えず、こう答えた。
「小規模の地震を起こして土砂崩れを誘発し、強制的に客を避難させる」
蓬の能力によって箱に包まれた清水寺。
無陀野が能力でその壁を破ることは容易いが、この状態で壁を壊せば清水寺もろとも崩れ去ってしまう。
そういう訳で、清水寺に来ている観光客を残らず避難させる必要があったのだ。ここなら土砂崩れが起きても街に被害は及ばず、寺付近に残った隊員が『土砂崩れが起きたから避難しろ』と騒げば客は揃って逃げ出すだろう。確かに無陀野が提案したその策は合理的ではあったが、普通の人が地震を起こすなんて容易にはできまい。
…………そう、普通の人には。
「屏風ヶ浦、以前出した巨人を出せ。あれを使って地震を起こす」
「いや……無理です…………!私……」
「問題ない。俺がいる」
まともに制御ができず、使うことで自分も周りも傷ついてしまう厄介な能力。それを簡単に使えるほど、帆稀は強い人間じゃなかった。また迷惑をかけるのは嫌だと、彼女は静かに俯く。
…………そんな帆稀の様子に、無陀野は小さくため息を吐いて、言った。
「ならいい。遊摺部、計画は中止だ」
『え?!どーするんですか?!』
「別の方法を考える。
これ以上遅れると中の奴らも危ない」
無陀野はきっぱりと言い、混乱する帆稀を振り返る。
「それと屏風ヶ浦、お前は退学だ」
「え…………」
「使えない奴はいらない」
「あの……」
振り向いた無陀野の背中がだんだん遠ざかっていくようで、帆稀は言葉を失った。……今この状況を打開するキーパーソンは自分。そして今、足手まといになりつつあるのも自分だと瞬時に理解した。それでも、そんな想いよりも恐怖が勝ってしまって、帆稀は俯いたまま呟いた。
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レン(プロフ) - 桃源暗記の夢小説少ないんでめちゃくちゃ嬉しいです!しかもお話も面白くてもう神かなんかですか?!これからも無理せず更新頑張ってください!応援してます! (2022年1月4日 22時) (レス) id: 9afc0ca98b (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 思わず一気読みしてしまいました!とっても面白いです、更新も無理ない程度に頑張って下さい! (2022年1月3日 0時) (レス) id: 16a4fd6cb5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 久々に更新嬉しい! (2021年11月17日 18時) (レス) id: bb356cf189 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - ヒロアカでまめこさんに出会いまして、桃源暗鬼も書いてる!ってなって来ました!これからも引き続き更新頑張って下さい! (2021年9月12日 11時) (レス) id: 1c4434e42e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - もうほんと最高です (2021年8月20日 22時) (レス) id: 75eebcd608 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年3月31日 19時