episode #48 ページ50
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がらんと広い和室には何枚もの布団が敷かれ、そこに怪我をした鬼たちが大勢横たわっていた。
誰も彼も軽傷どころではなくて、その怪我に思わず目を逸らしそうになる。
｢多くは今起きてる戦争で負傷した鬼たちだね｣
｢先生、こっちです！この方は戦闘隊員でさっき運ばれてきました！｣
｢！｣
言葉を失うAたちの元へ先程の職員がバタバタと走ってきて、1つの布団を指さした。そこには瀕死の男性がいて、彼は両手足を切断され、胸元から鳩尾にかけてを大胆に抉られている。血を吐きながら苦しそうな男性の傷は見るに悍ましく、その場の全員が思わず息を飲む。もって3分と言ったところだろうか。きっと彼は助からない……と誰もが思ったが、京夜だけはニコニコと明るい笑顔を絶やさなかった。
｢大丈夫っすよ旦那。死なないし死なせないっす！｣
｢オイ。どう考えても大丈夫じゃねえだろ、無責任なこと言ってんじゃねえよ｣
｢優しいね。四季くんだっけ？俺こう見えて結構偉いのよ。偉いのには理由があるっつーわけ｣
ムッと眉を顰めて四季が言うと、にこやかに笑ってみせた京夜はそんな四季の肩を叩き、男性が寝ている布団に近づいた。
｢じゃあ職場体験を始めようか｣
爽やかな笑顔を保ったまま、京夜が両手を広げる。
そして、こんな重症の患者を治すなんて不可能だと疑ってやまないAたちの前で職員たちと共に何やら準備を始めた。
職員が持ってきたのは大量の輸血袋。
そこから伸びるチューブを自分の両腕に繋ぎ、京夜は男性の枕元に立った。どうやら準備はできたようだ。しかし、今輸血を必要としているのは京夜でなく患者のはずなのに。何をしたいんだと訝しげに眺めていると、京夜は患者に話しかける。
｢旦那、腕と足どっちが欲しい？腕なら口を1回、足なら2回閉じてよ｣
京夜の問いかけに、男性の唇が僅かに動く。
彼が口を閉じた回数は1回。腕が欲しいようだ。
そして、男性は震え混じりにこう言った。
｢こ、子供……生……れ………抱き……め……たい……｣
掠れた声が紡いだ言葉に、京夜は｢任せろ｣と言わんばかりにニッと口角を上げた。
｢───────しっかり抱かせてあげますよ｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
