episode #40 ページ42
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Aが伸ばした手がボールに届く……寸前、
｢な、…………ッ！｣
なんと無陀野がぱっと手を開き、ボールはその手から転がり落ちたのだ。あともう少しで届いたのに、と悔しそうなAの前を通り過ぎ、ボールは迅の足元に転がっていく。
(……………………もう遅いか)
残り時間は3分程。全力で走ればゴールできるだろうが、迅がボールを手に走れば四季が奪おうと追いかけるだろう。きっと無陀野はその奪い合いに乗じてボールを取り返そうとするから、四季がボールを迅に託さない限り勝ちはない。迅に対して火花バチバチな四季がまさかボールを譲るなんてことも考え難いし、もう無理かと思われた。が、四季はその『まさか』の行動をとった。
｢よっしゃぁあああ！早く取ってゴールしちまえ！｣
｢｢｢？！｣｣｣
その言葉に、迅は足元のボールを持って駆け出した。
この子は何てことを言うんだと四季を見やるが、彼は至って普段通りで、無陀野からボールを奪ったと自慢げだ。
｢ねえ、大丈夫？｣
｢何がだ？｣
｢………………あのまま皇后崎くんがゴールしても私たちは勝てないワケだけど、いいの？｣
｢あ｣
ゴールする条件はボールを持って学校に着くこと。
森の中に転がされたボールは合計2つ。2人チームで協力してその2つを探すか、チームなど気にせず4人で2つを奪い合うかの二択であった。そしてAたちの手にボールはない。迅がゴールしたら彼が勝ってお終いだ。
｢忘れてたァァ！ボール奪えて満足しちまったァ！おォォオいちょっと待てえええ！！！｣
ガクッと地面に膝をつき、もう見えない迅に向かって叫ぶ四季。こんなの少し考えれば…否、考えずとも分かる事なのに。一方のAはほんの一瞬だけ沸き起こった戦意を失い、はァとため息をついた。今からなにかしようとしても遅いし、もう諦めようと無陀野に巻きついたロープをしゅるしゅると解く。
｢何となく予想はついてたけど……バカだね｣
｢流石にあのバカさは計算外だった｣
返せやゴラァア！と叫ぶ四季に呆れ返るAと無陀野は、顔を見合わせてまたため息。Aがよくため息を吐くのは確実に彼の影響だろう。
…………なんてことを考えていると、｢お？！｣と四季が声をあげた。
｢戻ってきたぞ？！究極の方向音痴ですか？！｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
