episode #32 ページ34
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斬撃に気を取られてできた無陀野の隙を狙い、背後から飛びかかる迅であったが、それよりも先に無陀野が動いていた。
──────ボフッッ！
何やら傘の石突きを迅の方に投げつけたかと思えば、それは煙幕を撒きながら小さな爆発を起こした。
｢クソっ、また煙幕か！あの傘いくつ仕込んでんだ！｣
煙の中から迅の悔しげな声が聞こえてくる。
きっとまた視界を邪魔して、遠くから攻撃してくるだろうと身構える迅だが、敵の足音は存外近くから聞こえた。
｢っ！｣
その足音に反応するももう遅い。容赦ない一撃が迅の脇腹に沈み、力尽きた迅はどさりと崩れ落ちた。
｢また遠距離で来るという決めつけはよくない。
それに右腕を庇いすぎて他が隙だらけだ。そもそも負傷状態で勝てると思ったか？相手の力量はしっかりと見極めろ｣
最後に、無陀野が傘についたボタンを押すと、広がった傘の先がハンドルから離れ、横たわる迅に覆い被さるように地面に突き刺さった。もう彼は動けまい。手も足も出ない迅に、｢これが実戦だったらお前は死んでるぞ｣と無陀野は言い放った。
｢まだだ！まだ終わってない！｣
｢………………必死だな｣
ボコボコに打ちのめされても尚、まだ起き上がろうとする迅は、何か目標に辿りつこうと必死で縋りついているように見える。力なく地面を掻く迅に、相も変わらず冷えた声が降り注いだ。
｢そんなに父親に会いたいか？｣
(………………父親？)
｢なんで知ってる………………｣
無陀野の口から飛び出したワードに、Aの眉がぴくりと動いた。同じように反応した迅も、目を見開いて無陀野を見上げている。
｢ある程度調べさせてもらった。
他にも知ってるぞ。例えば──────…｣
驚きのあまり言葉を失う迅に、容赦なく叩きつけられる現実。たとえ止めてくれと嘆こうが、発された言葉は止まることはない。
｢…………お前の父親が桃太郎って事とかな｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
