episode #02 ページ3
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ローラーシューズで颯爽と登場したのは、右側の髪を後ろに撫でつけ、右頬にマーカーで書いたような2本の線のある男だ。その頭から角が生えていることから、Aと同じ鬼だとわかる。
｢…………何。
男の名は
彼はAにとって兄のような存在でもあり、5歳で母親を亡くしたAの面倒を見てくれた、親のような人でもあった。そして無陀野の職業は教師。
教師に休みは少なく、こうして顔を合わせるのも1日に数時間あるかないかだ。そんな無陀野がわざわざ自分の元へ出向くなんて何事だと、Aはカッターをポケットに仕舞った。
｢お前を探すのに何時間かかったと思ってる。学校に行く時以外は部屋に居ろといつも言ってるだろ｣
｢いやでも私だって年頃の女の子なんだけど……｣
｢言い訳はいらん｣
｢うん、だよね。ごめん｣
遊びにくらい行かせてよ、というAの言葉をぴしゃりと切り捨て、無陀野はその切れ長の目でAを見下ろした。その視線に、蛇に睨まれた蛙も同然、Aは眉を下げて俯く。
年頃の女の子とは言うが、まあAの場合は友達もいないので遊びに行く事はまずない。
出歩くと言ったらこうして人気のない場所でリ スカに手を染めるか、良い死に場所を探すかの二択になってくるので、無陀野が彼女を外に出したくない気持ちも分からなくもない。
｢それで？わざわざ探し回ってまで私と話したかったんだよね、どうしたの？｣
｢はァ、まずはその傷を何とかしろ。話はそれからだ｣
｢あ｣
無陀野が指さす先にあるのは左腕に新しく出来たリスカ跡。Aは少し考えた後、リュックから取り出した消毒液を少々雑に傷口にぶちまけ、ガーゼを貼って包帯を巻いた。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
