episode #18 ページ20
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Aが話しかけても一切口を開かなかったというのに、見下したような四季の煽りに漸く迅が声を出す。｢どうせ退学なら痛い目見る前に消えろよ｣とAに負けず劣らずの口の悪さだが、四季は大して気にもしていないようにそっぽを向いた。
｢ふざけんな！目的があんだ。やめてたまるか！｣
｢どうせくだらない目的だろ｣
｢……………………は？｣
四季は迅の愛想のなさを特に責めるでもなく、一人で行くなら好きにしろとでも言いたげな態度だった…が、その一言だけは聞き捨てならなかったようだ。ピシリ、と空気が凍るのを感じる。マズイやつじゃないかとAが焦ると同時に、無陀野の声がした。
｢お前らが入った15分後に俺が入る。｣
そう言って『侵入禁止』のフェンスを開くと、森の中へと続く道が見える。
うだうだと不毛な喧嘩をしているだけ時間の無駄だ。この際不仲の男性陣たちは無視して進むことにした。とりあえずAの目的は、無陀野を殺す事。それが難しければ速急にボールを見つけてゴールする事。迅は無陀野を殺す気満々だから、上手く気配を消せば無陀野と交戦することなくゴールできそうだ。
｢──────それではスタート！！｣
その合図と共に、迅が勢いよく地面を蹴って飛び出して行く。もはやAの事は置き去りなのだが、その辺の予想はついていたので気にしないことにした。
女子2人と協力してクリアしたい四季と、邪魔にならないように動くことを最優先に心がける帆稀のペアは考えが真逆だが、無陀野を殺して希望の部隊に所属したい…ある意味自分のことしか考えていない迅と、自分が死ぬことしか考えていないAは些か目的が似ていると言える。
それなのにどうしてこんな話が合わないのか。
まずそもそも人として彼とは相性が合わなかったのだろう。それだけの話だ。Aはため息を押し殺し、ふらふらと森の中へと足を踏み込んだ。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
