episode #15 ページ17
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獲物を見つけた猛獣の如く鋭い視線を無陀野に向け、迅は言った。彼がどんな風にして戦うかは知らないが、無陀野はそこらの学生が勝てるような相手ではない。Aが2年かけてやっと背後を取れたものなのだから。そう簡単に殺せやしないだろう。しかし、迅はやる気である。
｢殺す……か。殺す気で構わない。もし殺せたら即卒業。希望の部隊に所属させてやる｣
｢即卒業って………………｣
その言葉に、Aの赤い瞳がきらりと輝く。
もしここで無陀野を殺し、『卒業』という肩書きを得れば、Aは普通よりずっと早く死ねることになる。でも、無陀野が死んだら誰がAを殺すのか。いくら考えても答えは出なくて、Aは恐る恐る手を挙げた。
｢あの、もし私が先生を殺したら、
｢約束…………そうだな。校長に話をつけておいてやる｣
｢本当？｣
｢勿論｣
ぱっと顔色が華やぐのを自分でも感じる。早ければ今日でこの退屈な毎日に終止符を打てると思うと嬉しくて、Aはその嬉々とした表情を隠しきれなかった。
｢お前らも目的があってここにいるんだもんな。
成し遂げたいなら勝ち続けろ。これから何度もお前らに壁をぶつける。乗り越えられない奴は散るだけだ。覚悟はできてるみたいだな少年少女｣
成し遂げたい目的のために、勝ち続ける。
Aに皆のような純粋な目標や夢はない。けれど、『勝てば死ねる』という希望がある。蹴落とされぬようしがみつき、勝ち続ければ、安らかな死がAを待っているのだ。死ぬために生き残るなんておかしいような気もするけれど、その心に迷いはなかった。
｢1人違うみたいだが……やめるか？｣
｢ふざけんな！男が
───────戦いはまだ始まったばかり。
これまでは序章に過ぎなかった。Aの『死』を求める物語は、これから始まるのだ。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
