episode #12 ページ14
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Aが“何の悪意もなく”言った言葉に、迅が思わず吹き出した。そして、まさかこんな可愛い女の子が毒舌だったなんてギャップ萌えかよ！と謎にポジティブを発動させていた四季は、クククと肩を震わせて笑う迅の姿に、更なる怒りが湧いてきたようで。
｢お前、今笑ったろ｣
｢女子に正論言われて鳩が豆鉄砲くらったような顔してる奴だぞ。笑わない方がおかしいだろ｣
｢て、ッめえ………………｣
そこで何かが切れたのか、四季はガタンと机の上に飛び乗った。
｢さっきから思ってたけど、お前の見下し感ムカつくんだよ｣
｢実際見下してんだよ鼻血くん｣
｢あぁ？｣
火に油を注いでしまったと気づかないAは相変わらずカッターで腕を切りつけているし、面白がったクラスメイトが2人を止めるなんてこともない。
これ以上火がついたら殺し合いになりかねない、そんな状況を変えたのは、他でもないあの人。
｢────おい、ここに遊びに来た訳じゃないよな？｣
気がつくと、机の上に乗って迅を睨め下ろしていた四季は迅の隣の席に座っていて、そんな2人の後ろには、見知った長身の男が立っていた。
(無人く………………先生)
どうしてこんな一瞬で……と驚きに目を見開いて見上げてくる迅に｢なにか驚くことでもあったか？｣と呑気に聞く始末。しかしその背後に揺らめくオーラに誰も言い返しはしない。これこそ無言の圧で相手を黙らせる、無陀野無人という男だ。
｢席替わる！コイツ嫌い！｣
｢そうか、仕方ない。本来今日は学校説明と案内だが、別のことをやるか｣
迅に対して『コイツ嫌です』オーラ全開の四季。
どうやらそれは迅も同じなようで、何も言わず四季に殺意を向けている。
学校説明をやらないなら何をするんだと聞いてきた四季に、無陀野はさも当然というように答えた。
｢お前ら鬼だろ？じゃあ鬼ごっこに決まってるだろ｣
｢………………え、遊ぶの？！｣
そう言った声は一体誰のものだったのか。もしかしたら全員がそう思っていたのかもしれない。だってそうだろう。鬼だから鬼ごっこをやりますなんて、そんなことあってもいいのか。
(ここは普通の学校とは違う………………から？)
これにはAも驚きで、腕を傷つける前に取り上げられたカッターを奪い返すことすらしなかった。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
