episode #11 ページ13
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｢……………………ねえ｣
｢！｣
教室に響く、澄んだ声。
その声は決して大きくないなのに、その場で盛り上がっていた全員がシィンと静かになった。
｢とりあえず血拭きなよ｣
いきなり視線が集まったことで少し驚いたAだったが、一度注目を浴びておいて｢なんでもないです｣とは言えなくて。おずおずとティッシュを差し出した。
｢お、………………｣
一方で、差し出されたティッシュと、その差し出し人を交互に見やった四季は、カチンと凍りついたように動かなくなっていた。高校を退学になる前からずっとグレていた四季に話しかけてくれるような物好き女子はいなかったのもので、少し混乱したのだ。
しかも、視界に飛び込んできたのはさらりとした黒髪に透き通る白肌。一切の曇りも許さない、林檎のような紅い瞳を揺らすその少女のせいで、｢ありがとう｣の言葉すら声にならなかった。
(て、典型的な美女じゃねーか！)
細く嫋やかな手からティッシュを受け取った四季は、鼻血をだらだら垂れ流して登場した数秒前の自分を脳内で殴打した。何、女の子にかっこ悪いところ見せてんだよ！と盛大にかっこ悪い事を言って。
…………………………が、
｢ティッシュくらい持ち歩いた方がいいよ。そこらじゅうに血ボタボタ垂れ流して汚い。衛生面ちゃんとしようね｣
｢え｣
四季が鼻に丸めたティッシュを詰め込むのを確認したAは、｢ありがとな｣と返されたポケットティッシュを受け取ってからそう言った。一応言っておくが、Aに嫌味を言っている自覚はない。こういう性格だ。何の悪意もなく、ただ思ったことを言っただけである。本当に、何の悪意もないのである。
｢……………………ふっ、｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
