episode #10 ページ12
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あからさまなため息を吐いてふいっとそっぽを向いてみせる迅の態度に四季は激昂し、今にも殴りかかりそうな勢いで身を乗り出した。……しかし、あることに気づいた四季は、その顔に勝ち誇ったような笑顔を浮かべる。プププー！と高笑う四季が指さしているのは、迅の頭。
｢お前ツノねえじゃん！まだ覚醒してない赤ちゃんか？知ってっか？訓練で出したり消したりできんだぜ！｣
弱み握ってやったりー！というようなドヤ顔と無様に滴る鼻血はあまりにもミスマッチしすぎていて、つい笑いそうになる。完全に自分より下だと舐めた態度をとる四季に、迅は面倒くさそうに舌打ちをし、“自身の頭から角を生やして”またため息をつく。
｢こんなもん出してる奴はルーキー丸出しの馬鹿だろ｣
まるで稲妻のような形をした迅の角は他の生徒より幾らか立派で、流石の四季も言葉を失ったようだ。
Aは静かにカッターを仕舞い、反対側のポケットを漁る。確かこっち側にポケットティッシュが入っていた筈。教室でボタボタ鼻血を撒き散らされていい気をする人はいない。ティッシュを取り出し、四季に｢ねえ｣と声をかけようとしたAの声は、誰かに憚られた。
｢おい｣
鋭い声が飛んできて、思わず肩が跳ねる。
振り向くと、短髪に角が生えたヤンキーちっくな少年が、組んだ足を高々と上げてこちらを睨めつけていた。
彼の名前は
碇の刺すような視線は、非常識に登場した四季ではなく、角を出しっぱなしの鬼は馬鹿だと言った迅へと向けられている。
｢その“バカ”ってのは俺も含まれてんのか？｣
｢……逆になんで含まれてないと思えるんだ？｣
｢男ならその喧嘩、“買う”一択だろ｣
振り向きもせず言う迅と碇の間に、バチリと火花が散ったように見える。一触即発とはこの事とも言えるこの状況。今にも喧嘩が始まりそうだ。
直線上だと2人のど真ん中にいるAは、巻き込まれて死ねますようにと少しズレたことを考えながらハァとため息をつき、少し椅子を引いた。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月21日 14時
