愛する貴方に真紅の薔薇を。２【文スト】

79話 : 飛べない梟の苦悩と葛藤 ページ33

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ここだ、と乱歩が地図の“とある”場所を指した。
その“とある場所”とは………………


｢｢｢｢───────海？！｣｣｣｣


一同の唖然とした声。
だって乱歩が指したのは、地図の中でもがらんと広い、海の中だったから。


｢速度は東南東に20節(ノット)。公海へ向け進んでいる｣


つーっと地図に這わせた指でそのまま眼鏡を押しあげ、乱歩は言う。｢今は死んではいない｣と。


｢…………ということは、敦さんは船に？！｣

｢輸送先は外国か｣


空気が一気に張りつめる。
国外に出されてしまえばそれで終わりだ。どうすることもできなくなってしまう。敦を乗せたポートマフィアの船が公海に出る前に止めなければ。


｢…………港に社の小型高速艇がある。｣


そこで、福沢が懐から鍵を取りだしてきた。
それは紛れもない、高速艇を動かす鍵。今から追いかければ間に合うと言ってその鍵を弾くと、それをキャッチした国木田がAを振り返った。


｢小野、武器を持って着いてこい｣

｢準備ならとっくにできています｣


コクリと頷くA。国木田はそれ以上彼女を振り返らず、一目散に外へと飛び出して行く。


｢………………お嬢まで駆り出していいのかい？｣


2人が慌ただしく去っていくと、与謝野がぽつりと呟いた。福沢は静かに目を閉じ、それに応える。


｢この件で1番悔しいのはAだ。
一緒に付いていながら護れなかったと、彼女なりに責任を感じているのだろう。責任を果たそうとする……その気持ちを邪魔する訳にはいかん｣

｢Aなら大丈夫。自慢の愛弟子だもん｣


役目を終えたとばかりに姿勢を崩した乱歩は、Aの焼いたクッキーを2枚まとめて頬張り、｢Aの焼き菓子美味しいんだよね、また作ってもらおーっと。｣と笑った。









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