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ユノが後ろに戻ると、次は幼なじみのアスタの番。
魔力がないにも拘わらず、鍛え上げた筋肉の力だけで青銅をぶち抜いたアスタは確かに強かった。……が、
(ま、そうなるよね)
もちろん手を挙げる者などいない。
たとえ素の力が強くても、この世界で生き残るのは魔法の力が強い者。
アスタのような半端者では魔法帝はおろか、上等な魔道士にすらなれないのだと、現実と共に冷酷な視線が突き刺さった。
｢そりゃそーだわな。たとえ高い戦闘能力持ってよーが、それが得体の知れねえ力じゃ誰も手ぇ出さねーわ｣
ゆらりと壇上の影が揺らめく。“黒の暴牛”団長、ヤミだ。
｢なんやかんやで結局魔道士に求められるのは魔力だ｣
多くは語らない低い声と一瞥だけで、会場に凄まじいプレッシャーが走る。…これが、この重圧が、魔法騎士団長を名乗る者の魔力。
ギャラリー席から立ち上がり、受験生たちのいる舞台へ飛び降りたヤミは煙草の煙を長く吐き出して、アスタの方へと歩み寄った。
｢魔力のないお前なんて誰も欲しがんねー。これが現実だ…！
お前さっき魔法帝を目指してるとか言ってたな？つまり
魔法帝は魔法騎士団長の中でも優れた魔法の実力を持つ者に与えられる称号。それを目指すということは、圧倒的な強さを誇る団長たちより更に強くなるということ。ヤミから発される只者ではないオーラは、その高い背も相まって余計に恐ろしく感じる。あれを前にしたらAでも逃げ出すし、魔法帝などなれないと諦めるだろう。アスタはそれに怖気付いたか、それとも……
｢………ここで魔法騎士団に入れなくても…何度コケても、誰に何を言われようと、俺はいつか魔法帝になってみせます！｣
真っ直ぐにヤミを見据えて、ハッキリとそう言った。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
