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転がった石はさっきの汚さとは打って変わってガラス細工のように美しく輝き、そしてその傍らには、両手に収まるほどの小さな動物がちょこんと座っている。
(わんこだ！可愛い！………………いや違うな……狼？)
犬にしては鋭い牙と目つきは確かに狼だが、身体はまだまだ小さな子どものようだ。石とそっくりなきらきらした黄色い瞳を輝かせ、狼はしっぽを振ってAに駆け寄った。
｢かっ……かわいい━━━━━！！！｣
きっと動物マニアの第六感がこの子の元へ導いてくれたのだと、そんな馬鹿げた考えをするくらいにはAの思考回路は緩みきっていた。
そして狼を抱き上げ、ふわふわの毛並みに顔を埋めたAは誓った。
｢飼う！｣
誰になんと言われようが飼ってやる。面倒は自分で見るし、バネッサが好きなものを飼っていいと言っていたから、文句を言われたら彼女のせいにしよう。Aは石を大事にポケットにしまい、狼を抱きしめて歩き出した。そうと決まればバネッサやアスタたちに許可を得に行かないと。この子のために美味しい食材も……
………………と思ったも束の間、
｢あ、ちょっと！｣
好奇心に溢れた黄色い瞳をぴかぴか光らせて、狼はAの腕の中から飛び降りた。子供とはいえその脚力は尋常じゃない。理解に遅れたAが追いかける頃には、随分と距離が離れてしまっていた。
(まずいまずい……！あの人だかりの中じゃ迷子になっちゃう！)
迷子になるならまだマシだ。無垢な猛獣が市場を荒らして大変なことになる危険性もある。広場を抜け、ここはやはり魔法を使って探すべきかと焦るAは、そこで足を止めた。
｢あ｣
｢？｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
