Nursery tale_. Ⅰ【ブラクロ】 (ページ46)

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｢やられた…………！｣

広場のベンチに座り込み、俯く。完全にやられてしまった。
タダでいいと向こうが言ってきたので有難く石を頂いたが、無料のものを貰うだけ貰って店を去るのは失礼だろうという親切心が顔を出した。お礼と言っちゃなんだが何か買わせて欲しいと言ったのが馬鹿だった。ここぞとばかりに高価なものを押し付けられ、押し問答の末、Aには必要ない魔力安定のブレスレットを買わされたのである。おかげで給料の半分が飛んでいってしまった。

後でノエルにでもあげよう。と落ち込みながら、Aはさっきの石を取りだした。

(ほんと何なんだろう……魔力は感じるけど)

太陽の光にかざすとキラキラ光って眩しい。
何も起きないと店主は言っていたが、高いブレスレットを買わされた分、この石をタダで貰えて良かったと思えるほどの効果を得て元を取らなければ。

そこからはAと石の攻防戦である。暖めてみたり、逆に蛇口の水で冷やしてみたり、ゴシゴシ擦ってくすみを落とそうとしてみたり。
色んな方法を試してみるけど、やっぱり石は黙り込んだまま。本当に何も起きない無害な石だったのか。

(ううん……どうしよう。魔法でもかけてみる？)

ここまで来るともうこれが最終手段。魔導書のどの魔法を使うかしばらく悩むと、結局魔導書を閉じ、シンプルにAの魔力を込めてみることにした。きっとまた何も起こらないだろうと期待はせず、魔力を纏わせた両手で石を包み込む。

しかしどうやらそれが、正解だったようだ。

━━━━━━━━━カッッ！

Aの魔力に当てられて、石がこれまでにない光を放ち始めた。

驚いて後退るAは、取り落とした石の汚れが徐々に取れていることに気がついた。くすんだ黄色がだんだんと美しい宝石のようになり、そして最後に一際大きく発光した後、じわじわと光が消えていく。眩しさに目をつぶっていたAがおそるおそる目を開けると、そこには…─────

｢これは…………子犬？！｣

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