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｢男の人って何でもかんでも託したがるよねえ｣
｢格好悪いの気づいてないのかしら｣
｢｢！｣｣
男の友情(仮)をまとめて嘲笑われ、がばりと顔を上げた。
猛毒にやられて死ぬと思いきや、視界は至ってクリアだし、痛みも徐々に引いていく。刺されたくらいで情けないね、という感情の籠った哀れみの視線を向けられたセッケは勢いよく刺された足元を見る。
｢こんなので死ぬわけないじゃない。ただの一時的な刺激毒よ。
さっき買ったシーケ軟膏塗っとけばすぐ治るわ｣
バネッサが患部に塗ってくれた軟膏のおかげで痛みは引き、毒の効果も弱まっていくのを感じる。そもそもただの刺激毒なので放っておいても死にはしないのだが。その程度の怪我で大袈裟に騒いだ自分が情けない。それに狙った女の子にまとめて引かれるなんて、格好悪いにも程がある。
｢次会う時までにもっと精進しとけよアスタ……！｣
毒は引いたとはいえ刺されたことに変わりはなく、片足立ちで帰っていくセッケの背中の虚しいことこの上なし。お前こそ次会う時にはそんなダサい姿見せてくれるなよと言ってやりたいところだが、次会う時がいつになるかは分からないのでやめておいた。
｢お婆さん、どうぞ｣
｢これ全部賭博で勝ったのか！すげえなばーちゃん！もう盗られんなよ！｣
｢ありがとうよ〜魔法騎士団様｣
盗人から取り返した金を持ち主に返すと、小さな老婆は何度礼を述べながらそれを受け取った。賭博でこれほどまでの勝ち星をあげるなんて、よほど頭がいいのだろう。
｢気ぃつけてなばーちゃん！｣と去っていく3人の後ろ姿に手を振って、老婆は愉快げにフォッフォッと笑う。そしてその直後、彼女の身体が煙に覆われた。
｢魔法無効化……か。見たことない魔法だったね。………いや、そもそもあれは魔法かな……？、
背中の丸くなった小さな老婆の姿とは一変、煙の中から現れたのは高身長の中年男性の姿。彼の全身を覆うマントが風に靡いた。
｢なかなか面白い子だね｣
素性は謎だが、内に秘める魔力とオーラは凄まじい。
彼は一体どこの誰で、何故老婆に変身してまで賭博場にいたのか。
その実態はAにもアスタにもノエルにも、バネッサでさえも分からない。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
